補助金は毒入饅頭である

補助金は数種の毒入饅頭であり,それを獲って食べる際は,相応の覚悟と万全の準備をもって,一気に食べることをおすすめする.

コロナ禍の救済政策として,地域の小規模事業者が申請できる補助金がいくつも出てきた.
本来潰れて然るべきゾンビ事業者の延命になっている面(30%くらい)は否定できないけれど,申請者全体の70%以上は,これら補助金で生存可能性が大きく上がっていると思う.

経営者にとって生き残ることは最優先の経営目標であり,まあ,労働者であっても,仕事を続けていってキャリアや技術を積み重ねていくことが,次の仕事につながるわけで,すでに採算がとれビジネスとして成立している事業体が生き残ることは,日本社会経済全体にとってもプラスである.

そのために補助金を資金調達の選択肢に入れることは,合理的な経営判断と思う.

ただし,補助金は毒入饅頭である.

毒を食す覚悟,解毒策,毒に侵されても的確な判断ができる意思,対毒体力などが無いと,補助金の毒が原因で倒産することになる.

そもそも一流の経営者・事業体とは,
自己資金100%で経営し,経営者が100%意思決定できる
事業体としておく.
事業規模の大小は関係ない.
年間300万円程度でも,ビジネスとして成立しているなら立派な一流経営者である.

次に,二流の経営者・事業体とは,
「なんらかの理由で経営者が100%意思決定できない」
事業体である.
株式会社で株式の何割かを経営者以外の株主が持っている等で,経営の意思決定が遅延したり,高頻度でビジネス好機を逃すような事業体となる.

その間の一流半に,
「自己資金率は低いが,経営者が100%意思決定できる」
事業体.
金融機関や社債等の借入があり,その返済と利子が固定費として負担になっている状態である.

そして,三流の経営者・事業体とは,
「経営の意思決定が他者によって行われる」
事業体である.
民間の完全な下請け会社や行政の委託事業が主要事業の3流NPO等である.

補助金毒入饅頭の毒成分1は,意思決定系に作用する毒で,一流事業体を二流以下に落とす作用がある.
二流は三流に,三流は四流以下に落とされる.某テレビ番組だと映す価値なしとなる.

そして,毒成分2.これは,原資由来の毒である.

政府直轄の救済策補助金(事業再構築,小規模事業者持続化補助金など)は,毒の効果が弱い.
同様に,地方自治体の創業支援系シードマネーの補助金も.
特にコロナ禍での特別設置補助金は,ほぼ毒成分2はないと思われる.

だが…
競艇,競輪,パチンコの上納金を原資とする,原資自体が穢れている補助金は,毒の効果が強い.2段階くらい落とされる強毒性.
というのも,そもそも三流以下がむらがっている補助金であり,その三流以下の蠢きのなかに飛びこんでいくわけで,相応の準備と覚悟が要る.

それらの補助金・助成金に採択されて「社会に認められた」的な発信をしているNPOがあるが,まあ,三流の認定書と毒入饅頭をもらっただけなので,完全な勘違いである.

さらに強毒性なのが,保険金の利ザヤや休眠預金等の,原資が詐欺レベルで強奪接収された資金を原資とする補助金である.
これは,即死レベルの毒なので,万全の準備と覚悟で申請せねばならない.

次に毒成分3.これは,補助金分配業務に寄生する寄生虫事業者が発する毒である.

これも弱い毒から即死レベルまで様々である.
ちなみにデロイトトーマツ事務局のは即死レベルの毒.
補助金に申請する際も,運良く採択されたら,交付申請を経て精算するまで,この寄生虫の毒と闘わなければならない.

そして,このコロナ禍で新種の毒成分4が発見された.

補助金確定後のつなぎ融資拒否毒である.

地銀や信金のほとんどは,コロナ禍で貸し剥がし準備をしている.

政府系金融機関も,2020年7月頃までは,政府の命令もあって積極的に融資していたが,おそらくはその積極策が完全に裏目に出て,回収不可能な案件が続出している.
2回目の緊急事態宣言頃から倒産する飲食店が大手メディアで紹介されているが,それらのほとんどは,数千万円の借入をふみ倒している.

政府は概算請求精算(≒補助金前払い)を認めないと,補助金分の運転資金が無いために補助金を辞退する事業者が続出すると思われる.

最後の毒成分5は,補助金申請者自体の自爆毒である.

そもそも補助金全般に言えることだが,補助金とは困っている事業者を支援するものではない.

補助金の募集要項に忠実に沿った事業を提案した,売上減要件等の申請要件を満たした事業者に対し,補助金規定の範囲内で使われた資金に対し,補助金を支出するものである.

なので,提案事業のレベルや採算性はあまり関係なく,募集要項を踏襲しているかどうかで判断される.

数千単位での申請を審査する(と言っている)わけだから,審査員の当たり外れが激しいし,
そもそもビジネスの新規性を審査できる人など,この世にいない.
白い犬の会社の代表でさえ,結構外すわけで.
結果,新規性のレベルが高いほど理解されない.

なので,募集要項の事例に記載されている程度の陳腐な新規性でよい.

などなど,補助金の申請書を書いて,添付書類を整えて,申請して,採択通知がきたら,2合目である.
どうも採択されたら,日本シリーズを制したかの勢いで祝杯をあげている人がいる.
まだ2合目だから…

そして,補助金が半分以上貰えるから半額で買える,と,不要なものを購入予定に入れる人もいる.
半額分は自己資金の無駄使いだから…

コロナ禍の緊急設置枠は,50%以上の採択率で,絶対数も多い.

ゆえに,「審査員よ…なぜこんなのを通したんだ…」という案件も多くなっている.

採択された事業者の中には,本申請までに修正すべき項目が事務局から送られてきた者も多いと思う.
なぜこんなのを通したんだという怨念がプラスされた毒成分3である.

それらの修正を通過して,本申請にて正式に交付”予定”額が決まり,事業に着手できる.
すなわち2合目から先へ登っていける.

ここで大切なのは,交付予定ということ.
補助金規定に沿って事業を行い,規定に沿って支払って,5合目.
ようやく折り返しである.

新種の毒成分4つなぎ融資拒否毒を克服しなければ,5合目にはたどり着けない.

そして,後半は,補助金事業報告書と精算である.

コツをつかめば簡単なことなんだけど,2合目を頂上と勘違いした事業者ほど,泥沼に陥っていき,毒成分5自爆毒を自ら発するようになる.

こんなはずではなかった,
事務局に話が通じない,
そんな規定なんて聞いていない(いやいや,HPにPDFで掲載されているから),
何度も請求書等を取り直すはめに,などなど.

ここで大切なのは,5合目以降は,補助金で支援するという事務局姿勢はゼロになるということ.
規定の通り粛々と処理することを徹底する.

なので,ここまでくると,規定通りに書類を提出できない補助事業者が100%わるい,となる.
5合目以降のミスは,すなわち補助金の減額である.

10合目まで辿り着けたら,交付予定額が交付決定額へと,まるでその辺の日本猿が人類に劇的に進化したかのように,まったく別物の金額へとフェイズシフトする.

そして,ここからが本質的に重要.
最も重要な解毒策で,本来の一流事業者へ復帰する近道.

補助金が入った事業を最低でも5年間は継続し,可能なら収益源へと成長させることである.

初年度から5年以上続けられる目処がたてば,その時点で一流復帰である.

20年以上前から宣言していることだが,

500万円の補助金が制度的に既に存在しているなら,迷わず獲りにいけば良い.

どうせだれかがとるものだから,全力で獲りにいけばいい.

即死レベルの強毒性の補助金であっても,ほかに選択肢が無いなら,万全の準備をもって獲りにいけばいい.

500万円の補助金,500万円の自己資金,500万円の累積黒字,不動産を担保にした500万円なども,

銀行口座に入れば同じ500万円である.

支払い先は原資の背景など全く気にしない.
コロナ禍でも税金の請求書は期日通りにくる.
家賃光熱水費も毎月請求される.

なので補助金申請資格があるなら,獲ればいい.

その補助金に値するかどうかは補助制度の審査員が決めることであって,みずから決めることではない.

今回のコロナ禍関連では,認定支援機関や商工会議所が事前審査をするかのように勘違いしている事業者もいるが,彼らはせいぜい申請書類が揃っているかどうかのチェック機関である.
それ以上の能力はない.申請事業内容に対しえらそうに役立たないアドバイスをするような担当だったら,即,他の支援機関へ変更するか,直接申請してしまえばいい.
存在自体が,毒成分3の末端寄生虫毒である.
毒虫からのアドバイスに従うという矛盾に気づいてほしい.

最後に.
上記のように,補助金は数種の毒入饅頭であり,それを獲って食べる際は,相応の覚悟と万全の準備をもって,一気に食べることをおすすめする.