「ほんがら松明」ふたたび!! 月夜を焦がす巨大燈明

4月19日、宵の口。

「ほんがら」を含む5本の松明が並ぶ若宮神社に、ぽつぽつと人が集まりだす。

神社に立つほんがら松明の胴体には、いつの間にか「奉納 ほんがら」と書かれた大きな垂れ幕が、オリンピック選手の胸元に輝く金メダルの如くかけられていた。

と、ここから車で15分ほど行った琵琶湖畔にある「休暇村近江八幡」のマイクロバスが乗りつけ、ガイドさんが浴衣姿の宿泊客を引き連れて降りてきた。そしてこのガイドさん、「こちらが島町伝統のほんがら松明で…」と解説をはじめるではないか!
本来、これは地元だけのお祭りで、よそから観光客がわざわざ見に来るなんて前代未聞?!

…あとで聞いた話によると、このガイド役の人物、休暇村の職員さんで、島町の老人の一人から映画「ほんがら」のDVDを譲り受け、映画を観て感動し、このオプションツアーを企画したらしい。

〜自然発生的、アートツーリズム〜

私たちも知らないところで、映画「ほんがら」が活かされ、人や地域が動いていたことに感銘を覚えた。

午後7時すぎ。

若宮神社では、今年のお稚児さんが持ってきた高さ1.5mぐらいの可愛らしい「お稚児松明」に、最初の火が灯される。なんと、今年はこの「お稚児松明」も「ほんがら」だった!!お稚児さんの近所の老人が作るのを手伝ってくれたらしい。

この小さな「ほんがら」はどんな風に燃えるのかと興味津々で見ていたところ、そのことを知らなかった自警団員が普通に横から火をつけてしまって…^^;;;

残念! …と思っていたら、お稚児松明づくりを手伝った老人の孫の「子ども松明」が到着。なんと、こちらも「ほんがら」だった!!さすがMさん。

早速、子ども松明の下に火が入れられる。と、地突きをする間もなく、てっぺんから小さな炎が顔を出した。
「長老」のひょうきんなパフォーマンスも飛び出し、境内は笑いと拍手に包まれた。
なごやかな雰囲気がひろがる。
 

8時半ごろ。

太鼓の渡りも境内に到着し、宵宮もクライマックス。

いよいよ、「ほんがら松明」に点火する。
去年一度経験しているだけあって、不安や混乱もなく、若衆がほんがらを取り囲んだ。みんな、去年よりうまくやってやろう、という意気込みが表情にあらわれている。

今年は、老人たちは手も口も出さず、静かにおだやかに見守っている。

最初、底から火を入れるのがうまくいかず、2度ほどすぐに火種が消えてしまった。
3度目、火を入れて3度ほど威勢よく地突きをすると、パチパチと内側を火がかけのぼる音がし、モウモウと煙が立ち昇った。

ほどなく、てっぺんから、一瞬、おおきな炎の塊が飛び出した!
製作時の工夫が功を奏したのか、あっけないほどの大成功。

昨日までの雨で少しシケっていたのか、なかなかヨシに燃え広がらず、2度、3度と炎が飛び出すたびに、境内に拍手がこだまする。

やがて、炎が松明を包み込む。熱エネルギーがほとばしり、見守る人々の全身に染みわたる。人々は、松明を通じてひとつになり、松明を通じて宇宙とつながる。

いやはや、アートだなぁ。
 

「ほんがら松明」の点火そのものはうまくいきましたが、祭全体としては、今年かなり代替わりしたようで、段取りがわからずあたふたしたり、年配者から叱咤の声が飛ぶ場面も。
こうやって、世代から世代へ、伝統が受け継がれていくんだなぁ。

…それにしても、つい昨年まで、老人以外ほとんど誰も知らなかった「ほんがら(松明)」というコトバが、いまや完全に市民権を得て、町民同士のコミュニケーションの架け橋として、さらには観光客をひきつける資源として、命を吹き込まれ、たしかにうごめき始めたのを感じた。

この様子なら、来年は、2本・3本のほんがら松明がお目見えするかもしれない。

作品としての映画「ほんがら」は3月にひとまず完成したけれど、島町のドラマは、まだまだ始まったばかり。これからが楽しみ!!