AAF的東北アートツーリズム紀行(1)〜いわきの海の幸・地域資源〜

ひょんなことから、3泊4日の東北旅行が実現!!
AAFネットワークをフルに活かした、中身の濃〜い4日間になりました。

その現場で感じたことを、ここに書きとめておきたいと思います。
 
 
 

【第1日目: 2010年3月12日(金)】

4日間も仕事場を空けるとなると、やっつけておかねばならぬことが次から次へと出てきて、結局徹夜で仕事を何とか済ませ、その足で朝の5時半に近江八幡駅へ。

いきなり予定の電車に1本乗り遅れてしまったが、大阪伊丹空港発、福島空港行きの飛行機に何とかギリギリ搭乗できた。ネットで予約した飛行機の格安チケットだったが、携帯電話で2次元バーコードを取得し、チェックイン不要ですばやく搭乗できたのが功を奏した。

飛行機の中でしっかり睡眠をとるつもりだったが、眼下に広がる景色に目を奪われる。

はじめて上空から巨大な琵琶湖がくっきりと見えた。Google Earthのツギハギ衛星画像とは、やはり美しさも迫力もぜんぜん違う。地球と、地上に住む我々との間をとりもつかのように、大地に広々と横たわる、どこまでも碧いMother Lake。

ほどなく、今度は延々と広がる白い雲の絨毯からすっぽりと鋭利な頭を突き出し、陽の光を浴びて輝いている富士山が、これまたくっきり見えた。この山も、地球内部のはるかなるエネルギーを地上に放出するエネルギースポットに間違いない。

…日本一の山と日本一の湖のあまりに美しい姿に心を満たされたまま、まだあちこちに残雪が積もる福島空港(右の写真)に定刻通り無事着陸し、ほぼ貸切状態(大型バスなのに、乗客は私を含めて2人だけ…)のリムジンバスに揺られて、いわき市へと向かう。

バスがいわき駅前の大通りに着き、下車するとすぐ、いわき芸術文化交流館アリオスの森さんが出迎えてくれた。P3の伊藤さんも電車で合流し、3人で森さんの車に乗って、まずは腹ごしらえをすることに。

なんだか場違いなヤシ並木(いわきは東北のハワイと言われているらしい)の広い道をひた走り、車は小名浜の漁港付近に到着。同じく水産業がさかんな福井県の小浜市はオバマ効果でずいぶん盛り上がっているが、一字違いのここ「小名浜」は、一見とてものどかだ。

店の前にイカがズラリと干されている食事処「うろこいち」の暖簾をくぐる。森さんは、どうやらいつもここに客人を連れてくるらしい。1階は海産物直売所で、2階が食堂になっている。店長の趣味か、店内にはゴージャスなカラオケセットが、本棚には往年の名曲ビデオがズラリ。予想通り、お品書きには迫力満点の海鮮丼や刺身定食の写真が並んでいる。

私も、実家の島根(松江市八雲町)に友人を招待するときは、たいてい境港の漁師が経営するマニアックな海鮮料理屋に連れて行くことがあるが、そこと実によく似た雰囲気だ。

キンキカレイという魚が、ここでは有名だというので、それの焼いたのと、海鮮丼を注文した。ちなみに、この店では、焼き魚は、焼くのにとても時間がかかる(その分、味も焼き加減も申し分ない)。そして、何といってもこの店のスゴイのは、お刺身定食をオーダーすると、マグロの刺身がタダでおかわりできてしまう。ごはんやキャベツやみそ汁のおかわり自由はよく聞くが、マグロのおかわりというのは…。

地元の海の幸で腹いっぱいになったところで、アリオスのあるいわきの中心市街地へ向かう帰り道すがら、湯本という場所に立ち寄った。

ここは、名前の通りの温泉街。
とはいえ、華やかな印象ではなく、一見、生活文化の香りがする落ち着いた雰囲気。
味のあるガイドマップを見つけた↓
http://www.iwakiyumoto.or.jp/osanpo.pdf

で、ここが中心になって、ウワサの「いわきフラオンパク」が毎年開催されているらしい。
http://iwakihula.onpaku.com/

常盤支所の駐車場に車を停め、森さんに案内してもらう。

すぐそこにあった「温泉神社」の鳥居の脇には、温泉が湧き出る岩のモニュメント(?)があり、ここが温泉の街であることをいやおうなしに印象付けさせられる。

道中、骨董品屋さんで素敵な手ぬぐいを見つけたり、ファンキーな衣装を着こなす旅館の主と出くわしたりしながら、ひょいと狭い路地に入り、奥へと進むと…突如、「三凾座(みはこざ)」という看板を掲げた古めかしい劇場風のファサードに出くわした。

こんなにすばらしい建物が、こんな路地裏の誰も来ないようなところに建っているなんて…まさしく「未発掘の地域資源」ということばがふさわしい。

ここは、かつて劇場や映画館として使われていたが、客が減って閉鎖されてしまった。
今では、登録有形文化財に指定されているものの、安全上の問題で公のイベント等では使うことができないとか…。巨大木造建築で技術的にもコスト的にも修繕が難しく、あと一歩で解体されようとしていたところを、何とか思いとどまってもらっているという。
解体されずに残せたのは、「お掃除」が決め手だったとか。
有志がボランティアで中をきれいに掃除するから、という約束で、今もちょっとずつきれいにしていっているらしい。

近所に住む所有者さんに鍵をお借りして、中を見せていただいた。
ステージには大きな銀幕が張られ、観客席にはまばらに椅子が置いてある。
長い歴史の重みを感じずにはいられない、すばらしい空間だ。
ここを拠点に、上映会でも展示会でもワークショップでも、何でもできそうだ。
ここを舞台にした物語を創作して劇映画を撮影するのも面白そう。
うまくやれば、この温泉街に客を呼ぶ付加価値としておおいに活用できるのではないか。
…という具合で、ここは、まさしくインスピレーションの泉である。

さて、名残を惜しみながら三凾座を後にし、車に戻ったまではよかったが、ここでひとつ問題発生。三凾座内部で埃が積もった舞台裏や二階席を面白がってずいぶん歩き回ったものだから、そのホコリをたくさん吸い込み、持病の鼻炎(花粉症)の琴線を引いてしまったらしい。この日の夜から、止まらないくしゃみと鼻水に悩まされるハメに…
 

車は、いわきの中心地に向かってひた走る。

道中、大通り沿いに張り出した岩に空いた巨大な穴を発見。
いわきはかつて炭鉱として栄えたまちだが、その遺構とも思えない。リアス式海岸の絶壁でよく見るような類の穴。昔はここが海岸だったのか?!同じ岩にお地蔵様が彫られているところを見ると、地元の方にとっては何らかの信仰の対象だったのかもしれない。ほかにも、炭鉱を掘った土が積み上げられてできた山があるとか、UFO岩なるものがあるとか、そういう隠れたお宝が、やはりどこの地域にもたくさんあるんだな、と改めて感じた。

…それにしても、いわき市は広い。とてつもなく広い。どこまで行ってもいわき市内である。

ようやく、市街地に戻ってきた。
とりあえず、荷物を置きに、予約していただいていたワシントンホテル椿山荘にチェックイン。このホテルの建物には、生涯学習プラザなどが同居しているようだ。一階の角っこにある宝くじ売場はよく当たるので有名らしい。この建物を含め、いわき駅周辺は再開発が進められており、駅前は今も工事中である。この工事が、翌朝私を苦しめることになろうとは…。

ホテルに荷物を置いて、いよいよ本日メインの目的地である「いわき芸術文化交流館アリオス」に到着。目の前に広々とした芝生の公園があり、かなり巨大な建物なのだが、不思議と景観になじんでいて、必要以上に自己主張していない。

正面ゲートから入って突き当たりのところにあるガラス張りの部屋(右の写真)が、今夜開催されるAlios Plants!の会場。ここで、私が映画による地域づくりの事例をお話しすることになっている。今回この旅を実現できたのは、アリオスの森さんがこの企画のために私を呼んでくださったから。

時間は午後4時を回ったぐらい。
Alios Plants!までは、まだかなり時間がある。
そこで…

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