『入院より在宅』 迫る 2025年問題

今年4月から、医療や介護の公定価格である、診療報酬と介護報酬が大きく変わります。社会保障費が膨張して、医療や介護が危機を迎えるいわゆる2025年問題を乗り切るためです。
目指すのは、「病院から、在宅へ」の転換。いわば「入院より在宅」という考え方です。在宅重視、どうやって進めるのか?
なぜ、政府が、“病院から在宅へ”を後押しするのか?
第一の理由は、何と言っても2025年問題です。2025年、つまり7年後には、団塊の世代が、全員75歳以上となります。その結果、日本人の5人に一人が75歳以上という、超高齢社会となります。医療や介護の必要性が急激に高まります。

一人当たりの年間の医療費でみますと、64歳までは平均で18万円かかっていますが、75歳以上になると、およそ90万7000円、およそ5倍に膨れ上がります。
介護費も、65歳から74歳までは、年間で5万5000円なのに対し、75歳以上は53万20000円。およそ9倍です。
年金なども含めた社会保障給付費全体でみますと2015年度は、およそ118兆円だったのに対し、2025年度は148兆円、およそ1,3倍に膨れ上がると推計されています。

高齢化が進むと、実は、入院や手術を必要とする患者は減ります。そのかわり、生活習慣病などの慢性疾患や、複数の持病をかかえるお年よりが増えます
こうなると、治せない病気とうまくつきあいながら、自宅や介護施設など、ふだん住み慣れた場所でいつものように暮らし続ける、ということが大切になってきます。
それが、「病院から在宅へ」という意味です。

① カギをにぎる「かかりつけ医」
「かかりつけ医」とは、単に、よく行く身近なお医者さん、という意味ではありません。、かかりつけ医は、普段から診療だけでなく、健康相談、食生活の指導、大病院の紹介などなど、その人の健康を支える、様々なことを行います。
この仕組みを利用している医療機関は、診療所全体の5%程度の、およそ5500箇所にとどまっています。

なぜ増えないのでしょうか?
それは、このかかりつけ医の重要な条件の一つ、「24時間対応」が大きなハードルになっているためです。
今回の改定では、チーム医療で乗り切ってほしいというわけです。
さらに、かかりつけ医の初診料を、今より800円増やして、かかりつけ医を支えます。

② 最期は「終の棲家」で
今回の改定で、もう一つの焦点は、みとりへの対応です。
年間の死亡者数は今後さらに増え続け、ピークの2040年には、2015年より36万人増えると見られています。「多死社会」、といわれる問題です。

今回の改定では、外部の医療機関の医師が、求めに応じて特養に出向いてみとった場合、かけつけた医師と特養の双方に診療報酬が認められるようにします。
また、自宅で看取る場合には、当然、かかりつけ医が、大きな役割を担うことになります。

かかりつけ医を受診する人を増やすには、実は、大きな論点が残っています。
かかりつけ医の紹介状なしにいきなり大病院を受診した場合、今でも、初診で5000円、再診で2500円を、患者が負担する仕組みになっています。
今回の改定は、この対象となる病院をもっと増やします。
今より、およそ6割増やして、全国の410の病院が、患者負担が必要な病院になります。まず、かかりつけ医にみてもらい、大病院にかかるのは、それから、という流れを強めることが狙いです。
まず、信頼できる「かかりつけ医」をどう増やしていくいのか
国も、医療界も、もっと明確にその道筋を示してほしい(時論公論)

◆詳細は下記HPをご覧ください
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/290563.html