『最期まで自分らしく』思いをかなえるために(時論公論)

人生の最期の時が迫ったとき、積極的な治療をうけずに、住み慣れた自宅で穏やかに過ごしたい、そう考えていても、実際には、病院で延命のための治療を受けながら亡くなる方が少なくありません。そうした現状を変えていこうと、国のガイドラインが11年ぶりに見直され、今月から本格的な運用が始まりました。

◆人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書平成30年/厚労省
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000200742.html

<ガイドライン見直しの背景>
治る見込みがない病気になった時に、どこで最期を迎えたいか55歳以上の人に聞いた調査結果、自宅が55%、病院など医療施設が28%、介護施設が5%などとなっていて、住み慣れた自宅で最期を迎えたいと考える人が多いことがわかります。ところが、実際にどこでなくなったのか、2016年のデータをみると、病院など医療施設が最も多く76%、自宅は13%にとどまっています。
最期まで本人の思いに沿えるようにしていこうというのが、ガイドライン見直しのねらいです。病院で最期を迎える状況が続けば、将来、病院の受け入れ体制が追いつかなくなるという危機感もあるのです。
<ガイドライン見直しの内容>
基本原則は3つ。患者本人の意思決定を基本とすること。医師単独ではなく看護師なども入ったチームで判断すること。痛みや不快な症状を緩和するケアを充実させることです。新しいガイドラインは延命治療だけでなく、生活を支えるケアも重視して、在宅や介護の現場でも活用できるようにしています。最大の特徴は、本人が意思を決めるまでのプロセスを重視した、アドバンス・ケア・プラニングという手法を新たに取り入れたことです。
<ACPとは>
アドバンス・ケア・プラニングのアドバンスは、前もってという意味です。
●自分で判断ができなくなる時に備えて、元気なうちに
●人生の最終段階の医療やケア、どこでどう生きたいかといった価値観も含め
●本人が、家族や医療・ケアチームと一緒に、
●話し合いを繰り返すことです。
その都度、話し合いの内容を文書にまとめることを求めています。
また、自分の意思を伝えられなくなった時に備えて、自らの意思を推定する人を決めておいて、その人にも話し合いに参加してもらうことを勧めています。
<自宅で最期を迎える条件>
もっとも多いのが、家族などの負担にならないこと。ついで、体や心の苦痛なく過ごせること。経済的な負担が少ないこと、自分らしくいられること、などとなっています。
国がアドバンス・ケア・プラニングを進めるというのなら、こうした不安を取り除いて、安心して自宅で過ごせる支援体制を整えることが大前提だと思います。

ではどんな支援が必要なのでしょうか。
看護小規模多機能型居宅介護。看多機とよばれるサービスです。自宅に看護師が来てくれる24時間、365日の訪問看護と訪問介護。通いのデイサービス、泊まりのショートステイを組み合わせて受けられます。医療とケアの両方に目配りできる看護師がいつでも相談にのってくれて、家族が行き詰った時泊まりにも対応してくれるので、大きな支えになります。
このほかにも最近は、自宅と同じような環境で過ごせるホームホスピスも出てきています。これから増える一人暮らしの人にとっても頼りになる存在です。
医療者との信頼関係があるかどうかで、本人の安心感や看取った後の家族の満足度が180度違います。
<私たちにとって必要なこと>
自分らしい最期を迎えるには何が必要なのか
●まず、元気なうちに最期をどう迎えたいのか自分で考えてみることです。
●地域にどんな支援があって評判はどうなのか調べてみる、最期は病院に行けば安心と決めてしまうのではなく地域に目を向けることが、その後に役立つと思います。
●家族に思いを伝え話し合っておく。これもとても重要です。本人が最期まで自宅で過ごすことを望んでいても、家族が安心だからと病院に連れて行ってしまうことがしばしばあるという話しも聞きます。本人の強い思いと周りの理解が欠かせないと思います。

◆詳細は下記HPをご覧ください
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/293692.html