今日も晴れています。
昨夜は久しぶりにきれいな上弦の月を見ました。

今週は私事でいろいろあり凹んでまして、胃が重く、食欲がありません。
私には非常に珍しいことですが、改めて心と胃はつながっているのだと実感。
おかげで3キロ体重が減りました。案外私はデリケートなのかもと思う今日この頃。

ところで明日は熊本地震から3年になりますが、まだ復旧したとは言えない状態のようです。

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本日2019年4月13日付読売新聞の記事によると
熊本地震の被害と現状

直接死—50人、関連死—218人(前年比6人増)、二次災害死—5人、家屋被害ー19万8119棟、
仮設入居者数—1万6519人(前年比2万1593人減)
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まだ1万6519人の方が仮設におられるのが現実なのですね。

仮設の方の数もそうですが、なんとか住んでいるけれど家が壊れているとか、職場が壊れた、仕事がなくなったとか、様々な問題を抱えておられる方も多いでしょう。現地でないとわからないことも多いと思います。

先日も東北の復興の件の失言で辞任された大臣がおられましたけれど、熊本の復興もなかなか進まないようです。

このような災害におけるキーワードの一つが「喪失」ではないかと思っています。

家族、友人、知人を失くした人。家や家財道具を失くした人、仕事や職場を失くした人、それまでの普通の暮らしを失くした人。この喪失が「心」にダメージを与えます。

老前整理でもこの「喪失」について考えています。

老前整理をしたいけれど、亡くなった親や配偶者の荷物を片付けないと(=遺品整理)自分のものの整理ができないという方がたくさんおられたからです。

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この遺品整理について私が担当した2018年のNHKラジオ講座テキスト「老前整理の極意」第10回 遺品整理をどうするか から紹介します。(NHK出版)

心の整理

 前略 遺品整理も老前整理と同様、ものの整理をするためには心の整理が必要です。遺品整理の場合の心の整理というのは、いやでも愛する人を失った悲しみと向き合わなければなりません。多くの人は、実際に愛する人を失うまで、その別れの悲しみがどのようなものか、想像するのも難しいでしょう。また亡くなった人との関係、どれくらい親しかったのか、亡くなった人が人生のどのような時期だったか、どのような状況で最期を迎えたのか、によっても悲しみの色合いがそれぞれ違います。

 このように「遺品整理」ということばでひとくくりにはできません。もし悲しみで遺品整理に手がつけられない人がいれば、そっと見守ってあげてください。今できるのはそれだけでしょう。

悲嘆のプロセス

わたしが遺品整理について悩んでいるときに出会ったのが、キャサリン・サンダース『家族を亡くしたあなたに』(ちくま文庫2012年)です。家族を失った悲しみというものがどういうプロセスを経て再生に向かうのかについて詳しく解説していました。ここのサンダースのいう「悲嘆の段階的な変化」を簡単に紹介します。

①家族や愛する人を失い「ショック」を受ける。

②「喪失を認識」することで余計悲しみが深くなる。エネルギーを使い果たすと、絶望に似た体験をする。

③自分の殻に「ひきこもり」落ち込む。次に回復しながら未来や希望について考えられるようになる

④「癒し」の時期。

⑤最後は「再生」で心も安定し、目が外に向くようになる。(数字は筆者)

このようなプロセスを経て、自分の暮らしを少しずつ取り戻していきます。しかしそれぞれの段階で何年かかるか、どのような事態が起こるかは一概に言えません。

(追記 ①〜⑤と必ずしも順番通りにはいきませんし、④から②や⑤から③に戻ることもあるのでこの点ご注意ください)

 これは先にも書いたように、亡くなった人との関係や悲しみを受け止める人の性格や環境それぞれの事情にもよるでしょう。

 ここで遺品整理の話に戻すと、遺族がこの悲嘆のプロセスのどの段階かにより、対処法も考えなければならないということです。

 故人の持ち物がそのまま残されていることで、絆が続くと思う場合もありますし、慰めを感じる場合もあります。だからこそ心の整理がつかなければ手がつけられないのです。

 前略 ここで夫や妻、子ども、親と分けて書いているのは、それぞれの立場の違いがあり、ひとくくりで遺品整理と片づ付けられないからです。わたしも以前家族を亡くした方に対して、「日日薬」(ひにちぐすり)、つまり時が経てば治りますよということばを口にしたことがあります。しかしこれは誤りでした。悲しみの受け止め方、回復の時期は人により違い、月日がたっても癒されない傷、忘れられないこともあるということをたくさんの方から教えていただきました。また一人ひとり悲しみの受け止め方、悲しみ方も違うことを知りました。

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このような悲しみを癒すのには次のようなグリーフケアがあります。

グリーフ‐ケア(grief care)
《グリーフ(grief)は、深い悲しみの意》身近な人と死別して悲嘆に暮れる人が、その悲しみから立ち直れるようそばにいて支援すること。一方的に励ますのではなく、相手に寄り添う姿勢が大切といわれる。悲嘆ケア。デジタル大辞泉より

私も2016年から2年間、上智大学グリーフケア研究所で、グリーフケアについて学びましたが、知れば知るほど奥が深く、また、上記のテキストに書いたように一人一人悲しみ方、悲しみの表し方、受け止め方、回復の時期が違うということです。

また時がたったから、必ずしも悲しみが薄れるという訳ではありません。

人を失った悲しみと共に、家や家財、仕事を失った喪失による悲嘆もあります。悲嘆は目には見えません。元気な振りをして言葉に出せない人もおられます。

熊本地震から、「もう3年たったのだから」という言葉に、傷つく人もおられるかもしれません。周囲に傷ついた方がおられれば、見守ってあげていただきたいと思います。