狐は獣か、神の使いか

日 時 平成29年11月16日(木)14時〜15時30分
 永井荷風の若い頃の作品「狐」について解説がありました。
 彼は若い頃、銀行マンとしてニューヨーク(アメリカ)〜リオン
(フランス)に勤務し、約5年後に帰国いたします。
 その直後に書いたのが、「あめりか物語」「ふらんす物語」で
その1年後にこの「狐」を書いています。
 この「狐」と比較されるのが、アニメ「もののけ姫」で、文明
(鉄をつくる)と自然(森を守る)の戦いでもあり、結局 蝦夷の
青年は「神ごろし」を経験し、近代に生きていくことになるものです。
 「狐」は明治維新で出世した父が負け組の水戸藩士や幕府旗本の家を3軒買い取り、自宅を建てます。
 父は東京大学で学び、アメリカのプリンストン大学で研鑚をかさね、後に工部省や文部省で活躍した近代的エリートで、東京の上下水道を立案した人であるとも言われている人です。
 母は儒者の娘で、反対に前近代的な女性でした。
 荷風(壮吉)はこの夫婦の長男として明治12年に生まれています。
 さて「狐」では庭にある井戸を不要として父は職人に埋めさせますが、母は井戸には神が居るとして地鎮祭をすべきではと思います。
 結局 庭に狐が出るようになり、近代的な父はこれを獣として殺させますが、私(荷風)は母の影響(狐は神の使い)もあって、これをすんなり受け入れることが出来ず、自立を阻まれるという内容です。