「生」と「死」を考える

日 時 平成30年10月11日(木)14時〜15時30分
 関西文化に育まれた文学の中から、今回は志賀直哉の「城崎
にて」をご紹介していただきました。
 彼は1883年(明治16年)に宮城県に生まれ、学習院初等科
入学(7才)、学習院中等科入学(12才)、学習院高等科入学
(20才)、そして東大に進みました。(23才)
 その後、徴兵(甲種合格)で入営するも、中耳炎でたった9日で
帰され、27才の時に雑誌「白樺」を創刊します。
 そしてこの作品はその「白樺」に1917年(大正6年)に発表されたものです。
 この作品は、心境小説(実際にあったことを題材に)です。
 冒頭の部分は「山の手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をした。その後養生に一人で但馬の城崎温泉に出掛けた。」・・・・とあり、彼は実際に相撲を見ての帰りに電車に跳ね飛ばされて入院の後、兵庫県の城崎温泉に療養のために訪れています。
 この時に数日間に実際に見た「ハチの死」「ネズミの死」「イモリの死」を素直に書いています。
 すなわち、ハチに対しては親しみとも言える静かな死を、ネズミに対しては死の直前の恐ろしさを、そしてイモリの死に対しては哀れみや淋しさを感じたようです。
 おそらく殺される立場で、「生」と「死」を考えたのではないでしょうか、彼は「生きている事と死んでしまった事とそれは両極ではなかった。それ程に差はないような気がした。」と結んでいます。