杏雨書屋の所蔵から

日 時 平成30年12月2日(日)13時30分〜15時
 杏雨書屋とは、武田薬品の5代目・6代目武田長兵衛が収集した
書物等が中心の専門家向け図書館のことで、大阪の修道町にある
ところです。
 主な所蔵品は、「和漢洋の医薬関係」「東洋学関係資料」「敦煌関
係の文献」「日本の古典」等々で、今回はこの中から鉄斎の摸本
「病草紙」と鉄斎の長男・謙蔵が入手したとされる「一神論」の紹介が
ありました。 
 前者の「病草紙」(写真)は平安時代末期から鎌倉時代初期に書かれた難病・奇病等を列挙したものを鉄斎が模写したものです。
 内容は、公開や流布をはばかるもの(手がふるえる、口が臭う等々)で、当時は絵巻になっていたもののようですが、さすがに鉄斎の筆は見事なものでした。
 後者の「一神論」は謙蔵氏が中国で購入したもので、最終的に武田家に入ってきました。
 この内容は、景教(キリスト教が中国に入ってきたときの呼び名)の経典で、7世紀頃(日本は大化改新の頃)のものと言われており、中国での布教に資するため漢字で書かれています。
 ただこの「一神論」には、偽物説や後代(唐の時代ではなく宋の時代では・・・)写本説もあり、一度紙質を調査してもらった由ですが、時代は特定できなかったとのこと。
 結局 筆跡が猪遂良(唐の書の大家)風であることから、唐代の写本ではとのことでした。