「節義を立て通すのが男/土方歳三」

一昨年、司馬遼太郎先生の小説を100冊程買い込んで、

それをスキマ時間にチョコチョコ読んでいるのですが、

余りにも面白いので、

この土日に一気に読破してしまったのが、

今年映画化(https://moeyoken-movie.com/)される

『燃えよ剣』。

1964年の刊行から現在までに単行本・文庫を合わせた

累計発行部数が500万部を超える大ベストセラーとなった本で、

新選組副長・土方歳三を主人公に、

近藤勇、沖田総司など新選組の志士たちの人生と、

彼らが生きた激動の時代・幕末を描いた作品です。

小説上のみの人物である、

土方歳三の恋人・お雪などとの情交が、

土方歳三の人物像を別角度から更に深堀りし、

更にハイレベルな面白さと感動をもたらしています。

土方歳三曰く

「刀とは、工匠が、人を斬る目的のためのみ作ったものだ。

刀の性分、目的というものは、単純明快なものだ。

兵書と同じく、敵を破る、という思想だけのものである。

しかし見ろ、この単純な美しさを。

刀は、刀は美人よりもうつくしい。

美人は見ていても心はひきしまらぬが、

刀のうつくしさは、粛然として男子の鉄腸をひきしめる。

目的は単純であるべきである。

思想は単純であるべきである。

新選組は節義にのってのみ生きるべきである」

「しかし土方さん、新選組はこの先、そうなるのでしょう?」

「どうなる、とは、漢(おとこ)の思案ではない。婦女子のいうことだ。

おとことは、どうする、ということ以外に思案はないぞ。

孫子に謂う、その侵掠(しんりゃく)すること火の如く、

その疾(はやき)きこと風のごとく、その動くこと雷震(らいしん)のごとし。

男の一生というものは、美しさを作るためのものだ、自分の。

そう信じている」

男の美学。

滅びの美学。

一生一天命。

それを成す、その為に今、命与えられ、ここに生きている。

それを成さぬのは男の恥・・・ということでしょうか。

とにもかくにも、カッコイイ!!!!!

ワタクシ今世においては、男に生まれてはおりませんが(笑)、

そのような生き方がしたいと思い、シビレました。

それに比べまして我々現代人は、平和ボケして、たるみきって、

他力本願で、行政が悪い、社会が悪い、

コロナが悪いなどと責任転換ばかりで、全員ザコです(はい。私もです^^;)

土方歳三や新選組の考えていたこと・やったことは、

いいことかわるいことか?そんな善悪論などという、

単純な一つの二元論で私は論ずるつもりはありません。

その時代から150年も経った今では、

客観的な検証や判断(答え合わせ)は可能だと思います。

しかしながら当時の幕末の動乱期には、

誰も未来/答えが分からなかったんですよね。

したがいまして

「あいつらがしれかしたことは愚かである」と論評する

現代人の言論自体が、愚かです。

この『燃えよ剣』が雑誌に連載されていた時に、

別の新聞で『竜馬がゆく』を連載されていたって、

どんだけ凄いねん!って改めて司馬遼太郎先生の小説(世界)に

ますますドップリハマってしまっておりますが、

司馬小説の魅力は、史実(過去の事実)をベースにしつつも、

史実という現代人にとってなかなかイメージ出来ない・

親近感が沸かないものを、あたかも今、

自分の目の前で起こっているような出来事として、

また生きている人のように、【色】を与えて鮮明且つリアルに

読者の目の前で再現し、そこに私たち読者を惹き込んで、

完全に感情移入させてしまうという

【司馬マジック】というものがあって、

それが、司馬先生が亡くなられた後も、

時空を越えてこの令和の時代においても消えずに

鮮やかに効き続けているというところにあろうかと思います。

そして読後は必ず、

「あー。明日から、小説の主人公(土方歳三など)のように、

一生一天命に向かって節義を立て通し、がんばるぞ〜!!!」って、

メラメラと生きる気力が湯水の如く湧いてくる・・・

完全に読者に小説の主人公である土方歳三などのタマシイ(イキザマ)が

のりうつって、前向きに生きていけるという感じです。

他の方の歴史小説も見たことありますが、

なんかあれもこれもと「余計なもの(出来事や人物、文字、雑念)」

をくっつけ過ぎて、物語全体が煩雑・複雑になっていて、

読んでいてしんどくなります。

私にとっては司馬小説のように、

考え尽くされた上でのシンプルさやシャープさがあり、

そして歴史(過去に存在した全ての人やもの、現象)に

愛ふれる視線を贈り続けておられる

司馬先生の心(お気持ち)に、安心して感情移入(心を預ける)ことが

出来ると観ています。

そして「日本の歴史って面白い!」

「自分が生まれ育った家や地域、国の歴史を知ってみたい!」と、

【歴史(過去)】というものに、興味関心を得る、

かなり大きなきっかけやモチベーションにもなっています。

土方歳三の本当の人生がどうだったとか、

司馬遼太郎先生個人の人生や思考・主義主張がどうであったか、

そんなことは一切関係の無い次元のお話です。

ということで、このゴールデンウィークも、

買いだめしている次の司馬遼太郎先生の小説を読みます!

(もう一度『燃えよ剣』を読み返すのもいいかなぁ^^♪)