長年続く日本人のカルシウム不足
カルシウム不足は骨粗しょう症だけでなく動脈硬化の原因にも
日本人は性別、年代を問わずカルシウム不足が続いている。カルシウムを効率よくとるには
(2013年06月11日)
カルシウム不足が続くと、骨粗しょう症だけでなく動脈硬化を引き起こす恐れが
「飽食の時代」と言われるようになって久しい日本ですが、長年「カルシウム不足」が指摘され続けています。
日本人のカルシウム摂取量は、1970年代からほとんど増えていないばかりか、近年少しずつ減ってきていることが国の調査でわかりました。
カルシウム不足というと、骨がスカスカになる骨粗しょう症を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、カルシウム不足の影響は骨だけにとどまりません。
人の体に存在するカルシウム量は体重の1〜2%といわれ、成人なら1kgにものぼります。
その99%は骨と歯に蓄えられていますが、残り1%は血液中や細胞に存在し、ホルモンの分泌や血液の凝固、筋肉の収縮、神経の伝達といった体の重要な機能を維持・調節する働きをしています。
そのため、血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれ、不足しそうになると骨を溶かしてカルシウムを血液中に放出し、不足分を補充しようとします。
カルシウム不足が慢性的に続くと、常に骨からカルシウムが溶け出すことになり、骨がもろくなって「骨粗しょう症」になりやすくなります。
さらに、血液中に放出されたカルシウムが血管壁に付着し、動脈硬化を引き起こす原因にもなることがわかってきました。
働き盛りも若い世代も、カルシウム不足は深刻
日本人のカルシウム摂取量がどれくらい不足しているかというと、年齢、性別によって異なりますが、たとえば次のようになります。
・30〜40代男性 推奨量 650 摂取量 約440 不足分 約210(単位mg/日)
・50〜60代男性 推奨量 700 摂取量 約530 不足分 約170
・30〜40代女性 推奨量 650 摂取量 約440 不足分 約210
・50〜60代女性 推奨量 650 摂取量 約530 不足分 約120
(「日本人の食事摂取基準(2010年版)」、「平成23年国民健康・栄養調査」より)
これより若い世代では、「推奨量」と「摂取量」の対象年齢が異なるため単純に比較することはできませんが、
「18〜29歳の推奨量」が男性で1日あたり800 mg、女性で650mgのところ、「20〜29歳の摂取量」は男性約450 mg、女性約400mgで、
不足分は男性約350 mg、女性約250 mgにものぼります。
人の骨量は20〜30代でピークを迎え、その後徐々に減っていき、特に女性は閉経後急激に減ります。
そのため、若いうちにカルシウムをしっかり蓄え、それ以降もカルシウムを十分補充して骨量の低下をなるべく抑えることが大切なのです。
しかし、日本人のどの年代もカルシウムが不足している人が多いと予想されることから、近い将来骨粗しょう症になる人が増えることが心配されます。
骨粗しょう症になるとちょっと転んだだけで骨折しやすくなり、QOL(生活の質)の低下や寝たきりの原因になります。
またカルシウム不足によって誘発される動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞といった重大な病気につながる恐れがあります。
これらを予防するためにも、カルシウムを十分にとることが大切です。