「温泉サービス」…健康志向へ多様化

「温泉サービス」…健康志向へ多様化2014年06月03日 08時30分
短期滞在でも湯治気分

長湯温泉に4年前にできた小さな貸し切り温泉「福ねこの湯」。女性客や家族連れも利用しやすいよう清潔な内装が特徴(竹田市提供)

「B・B・C長湯」に滞在する男性客。夕食はレトルトのカレーとご飯を作って済ます。地元の人がくれた青菜もゆでて添えた

 温泉のサービスが「健康づくり」をテーマに多様化している。

 ウォーキングなどの野外活動と組み合わせたり、栄養に配慮した食事を提供したり。自炊しながら温泉地に長期間滞在し、心身を癒やす湯治の良さを見直す動きもある。

いずれも温泉ファンの裾野を広げる取り組みだ。

 大分県竹田市の山あいにある長湯温泉で2008年から営業するコテージ風の宿泊施設「B・B・C長湯」は朝食のみ提供する。

宿泊客が自炊できるよう各部屋に小さな台所を備え、温泉は周辺の共同浴場などを利用する。1泊6264円(税込み)から。

 5月中旬の週末。この宿に3泊滞在した東京都町田市の無職男性(66)は、「若い頃から各地の温泉に行っているが、自炊できる宿は珍しい。

自分のペースで温泉に入り、空いた時間はサイクリングや散歩。食事の量も調整できる。短い滞在でも、心身ともに癒やされます」と満足そうだ。

 4か所の温泉地を抱える竹田市は08年から、短期滞在でも湯治の気分を体験してもらえるよう、「竹田式湯治」と名付けた滞在スタイルを提案している。

共同浴場巡りと、地元産の食材を使った健康食を出すレストランでの食事を組み合わせたり、自炊可能な宿泊施設を紹介したり。同市商工観光課の工藤隆浩さんは「宿でどんちゃん騒ぎをする温泉旅行でも、古めかしい湯治でもない。

旅行者の目的や時間の余裕に合わせた過ごし方を見つけ、リフレッシュしてもらうのが目的」と話す。

 農閑期に農家の人などが、自炊しながら2〜3週間温泉地に滞在し、心身を癒やした湯治。そうした湯治文化の残る東北地方の温泉地でも、幅広い宿泊客を受け入れるための取り組みを行っている。

 岩手県花巻市の「大沢温泉」もそうした湯治宿の一つ。部屋代は1泊1972円(税抜き)から。それに布団(200円、税抜き)など利用したものの料金を足していく。地元の常連客が自宅から布団などを持ち込むため、昔ながらの方式は変えていない。

 一方、一般客にも泊まってもらおうと、炊事場の利用方法や浴衣の着方などをホームページで解説したり、併設の売店で買える食材を使った自炊方法を紹介したりしている。近年は出張の会社員や、1泊だけ利用する若者も増えた。

 宮城県大崎市の東鳴子温泉にある「旅館大沼」は1泊からでも可能な「プチ湯治」を掲げ、玄米と旬の野菜を中心とした「一汁三菜」の食事を出す宿泊プランが女性を中心に人気だ。

適量の食事をし、温泉につかって体調を整える湯治本来の姿に立ち返った取り組みが受けているという。