——では、日本の廃校舎に目を転じてみましょう。

なぜ日本は「廃校」や「公園」を使わないのか
「570兆円の公的不動産活用」で世界一になる

阿部 崇 :ジャーナリスト 2017年02月21日

——では、日本の廃校舎に目を転じてみましょう。再利用されていない廃校舎が山のようにありますね。たとえば東京・台東区の旧下谷小学校。上野駅からわずか徒歩5分という絶好の立地にあります。ただ、鉄筋コンクリート造りではありますが、1928(昭和3)年竣工で築約89年。現在の耐震基準を満たしていないため、廃校の貸し出しなどはなされていません。

行政は「安全に対する過度な呪縛」から逃れよ

木下 斉(きのした ひとし)/一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事。1982年東京生まれ。高校在学中に全国商店街合同出資会社の社長就任。一橋大学大学院商学研究科修士課程在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2007年熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地で「まち会社」へ投資、設立支援を開始。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス設立。内閣官房地域活性化伝道師なども務める
野尻:耐震強化は開発する民間側でするから、ぜひケネディスクールとはまた違った、彼らを上回るようなホテルをやらせてほしいですね。上野からも浅草からも近いし、スカイツリーは見えるし!というホテル。任せてもらえるのなら、絶対にやります!

馬場:なぜか行政は「建物の安全に関しての責任は自分たちが持たなければならないという呪縛にとらわれていますね。

一定の基準はあるわけだから、民間に任せて「投げて」しまえば、行政が自ら関与する形で耐震補強をするよりも、民間企業がやったほうがコストも抑えられるし、しかも使いやすい耐震補強をするのに。だから台東区は、今の段階から野尻さんに「手渡すべき」だと思います(笑)。

野尻:保育園のような施設の耐震基準が厳格なのはよくわかります。しかし、危ないものを作ってもいいようにするという意味ではなく、廃校を再生する事業体によっては、リスクの取り方に関して規制を見直してもいいものもあるのではないかと思います。

馬場:耐震基準の厳格な運用自体は悪いことじゃないんです。これは程度の問題だと思いますね。行政が行政の責任の下で全部やろうとするのではなく、責任も含めて民間に手渡す制度があれば、それだけで現在利用されていない公的不動産が一気に活用されるようになるでしょうね。