DNA検査で運命は決まらない(3/3)

DNA検査で運命は決まらない(3/3)2014年9月1日
私達の健康を左右する「マイクロバイオーム」という新しい発見
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 種類を増やしてバラエティ豊富にするためには、自然や動物と交わることが有効です。自然は、微生物の宝庫です。ガーデニングで土に触る、公園を散歩する、森、山、海、川、池に入る、土で育った野菜や果物を食べることで土のマイクロバイオータを取り込むことができます。質の良いマイクロバイオーム(DNA)を摂りいれるには、その食物が育った土壌や水質、栽培方法などが、とても重要です。

 動物も固有のマイクロバイオータと共存しています。動物と生活することで、お互いのマイクロバイオータの交換が自然と行われ、バラエティ豊富な構成をつくることができます。

 また、マイクロバイオータの分布は、人種ごとに異なりますから、海外に行って、知らない土地の料理を食べる、人々とふれあう等もバラエティ豊富なマイクロバイオータをもつことに有効です。マイクロバイオータの種類が多いということは、多様な環境の変化への対応力があることを意味します。

 余談ですが、母親が直接手で結んだおにぎりの方が、手袋をして握るコンビニやスーパーの“手作り”おにぎりよりも美味しい理由にもマイクロバイオータが関わっています。母親の手のマイクロバイオータは、お米と交じり合って、様々な有益な酵素反応(生野菜の回参照)を起こします。母親のおにぎりが美味しいのには、科学的な理由もあるんですよ。ちなみに自家製のお味噌も糠漬けも手袋をつけずに直接手で混ぜることで、その家独自の美味しい味となります。

 私達は自己のDNAだけが形作っている存在ではありません。自己のDNAの100倍以上のマイクロバイオーム(DNA)と共生している存在です。DNAの塩基配列だけで運命は決まりません。環境によってDNAは発現方法(運命)を変えるのですから。

 遺伝子検査だけで、本当に人生を決めてしまってもいいのですか?
 体の一部を切除する前に、マイクロバイオータとの戦略的互恵関係を築くことを考えてみませんか?

 食事やライフスタイルを変えることで、運命を変えることができるかもしれないんですよ。

【参考文献】
1.“Some of My Best Friends Are Germs“, MICHAEL POLLAN, May 15, 2013, http://www.nytimes.com/2013/05/19/magazine/say-hello-to-the-100-trillion-bacteria-that-make-up-your-microbiome.html?pagewanted=all&_r=1&
2.“Genetic/Familial High-risk Assessment: Breast and Ovarian” Version 1.2012, NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, National Comprehensive Cancer Network, http://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/english/genetic_familial.pdf
3.“The Coming of Age of Nutrigenetics and Nutrigenomics” Kang, Jing X. MD., Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School. 2012, Karger AG, Basel, http://www.karger.com/Article/PDF/339375
4.“A Clinician’s Primer on the Role of the Microbiome in Human Health and Disease”, Sahil Khanna, MBBS, MS, Pritish K. Tosh, MD., Mayo Clinic Proceedings, Volume 89, Issue 1, Pages 107-114, January 2014, http://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(13)00886-0/fulltext
5.“The core gut microbiome, energy balance and obesity”, Peter J Turnbaugh and Jeffrey Gordon, Jun 2, 2009, J Physiol. Sep 1, 2009; 587(Pt 17): 4153-4158., PMCID: PMC2754355, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2754355/
6.“MICROBIOME – The Placenta Harbors a Unique Microbiome”, Kjersti Aagaard, Jun Ma, Kathleen M. Antony, Radhika Ganu, Joseph Petrosino and James Versalovic, 21 May 2014: Vol. 6, Issue 237, p. 237ra65, Science Translational Medicine, DOI:0.1126/scitranslmed.3008599, http://stm.sciencemag.org/content/6/237/237ra65.abstract
7.「メタボリックシンドローム関連の遺伝子多型を利用したテイラーメイド食事療法の開発」平成23年度健康科学部門活動報告、田中明、臨床栄養医学教授, http://www.eiyo.ac.jp/ions/wp-content/uploads/2012/07/%E5%B9%B3%E6%88%9023%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%A7%91%E5%AD%A6%E9%83%A8%E9%96%80%E6%B4%BB%E5%8B%95%E5%A0%B1%E5%91%8A.pdf
8.「遺伝子解析でみた日本食の栄養特性」東北大学大学院農学研究科機能分子解析学、教授、宮澤陽夫, http://www.jafs.org/pdf/21_kinen_koen.pdf
9.「腸管免疫系と腸内細菌の共生関係の構築に必須の分子を発見」平成26年4月29日、科学技術振興機構(JST)、東京大学 医科学研究所、理化学研究所、慶應義塾大学, http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140429/index.html
10.“Angelina Jolie Plans More Surgery in Lieu of Cancer Prevention Lifestyle.”, Sarah, Celebrity Health, The Healthy Home Economist, June 1 2014, http://www.thehealthyhomeeconomist.com/angelina-jolie-plans-surgery-lieu-cancer-prevention-lifestyle/?utm_content=buffer2144c&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

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