東大寺・二月堂「お水取り」

・日時:1月10日(火)午前10時〜12時10分
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:佐藤興治先生(奈良文化財研究所名誉研究員)
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1.東大寺「お水取り」とは
「奈良市東大寺二月堂で、三月(旧暦二月)に行われる修二会(しゅにえ)をいう。」((注)二月に修する法会なので修二会とよぶ。)
・天平勝宝四年(752)に実忠和尚によって始められて以来、この行法は一年も欠かされることもなく、今日に至っている。今年で1266回目を迎える

2.「お水取り」の目的【 懺悔と祈り】
行事の中心となるのは、練行衆(れんぎょうしゅう)とよばれる11名の僧侶による本尊十一面観音に対して懺悔を行う「十一面悔過(けか)」と、朝廷・国家・施主の繁栄安穏を祈願。
(注)本尊の十一面観音は絶対秘仏。

3.修二会の行事
ほぼ1ヵ月続く修二会は、「前行」と「本行」に分かれる。
①「前行」(ぜんぎょう)
「2月20日に始まり、月末まで行われ、練行衆は戒壇院の別火坊で合宿生活を始める(別火(べっか)とは、俗界とは別の神聖な火を使い、世俗と隔離する意味である)。この期間は、「椿の造花、紙衣(厳しい寒さに耐えるために紙衣を着る)、差懸(さしかけ=はきもの)など」と声明の稽古、法螺貝の吹き合せなどが行われる。」
「本行」 (ほんぎょう)
「3月1日より本堂内陣での本行になる。本行は上七日(かみしちにち)と下七日(げしちにち)の計14日間行なわれ、その内容は長短あり多岐にわたる。一日を六時(日中、日没、初夜、半夜、後夜、晨朝)に分けて、呪願、称名悔過、懺悔、五体投地、声明の唱誦など多岐にわたる法要が繰り返される。」
◆松明(たいまつ)…本行の間、練行衆が二月堂に上堂する際に松明に先導されて登廊し舞台の欄干で火の粉を散らす。(毎晩、7時頃には松明が上がる)
◆大松明(だいたいまつ)…3月12日には、特に大きな籠(かご)松明が11本を童子が担ぎ、堂の回廊で大きく振り回す。(欄干で振る松明の火の粉に、何万という参観者のどよめきが湧き上がる。)
◆3月12日深夜に法会の中心となる御水取が行われる。二月堂下の若狭井(閼伽井屋(あかいや))から水をくみ出し、本尊に供える行事。(年に一度、聖なる水を汲む)。
◆達陀(だったん)…修二会の終盤の12日、13日、14日に、火と水がせめぎ合う「だったん」の世界に変わる。松明の火の粉を振りまきながら練行衆が堂内を走り回る場面が展開される。(イラン・中東の拝火教の影響)。

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NHK特集「お水取り」の観賞【1987年製作、45分】
(印象に残る場面)
・11人の練行衆が、二月堂の湯屋に集まったところから始まる。別火坊での準備作業…花拵え(椿の花を400本作る)、差懸を作る(はきもの)、紙衣を作るなどの紹介。
・京都府田辺町の松明の竹の伐採。そして、長年にわたり、松明づくりでの周辺の人々の協力。「お水取り」のたいまつは有名であるが、本番を前に長い準備があることは、あまり知られていない。
・声明の稽古風景(からだで覚える。口伝(くでん)で習い伝えられている。一斉に走りの行。五体投地(みずからの体を投げる行)。
・神名帳を詠みあげる。(神名帳より約1万3千の神仏をよびあげる。)
・過去帳は2回読みあげる。聖武天皇、光明皇后を始め、将軍頼朝、現在の首相も含む。「青衣の女人」の話などさまざまなエピソードを含む。
・「南無観自在菩薩」−十一面観に懺悔することから始まる。大導師の祈り−世界の平和と人々の幸福を祈る。
・練行衆の食事は、1日1回(一汁二菜)。食事中は無言。
・3月12日のクライマックス。午後7時30分(籠松明)。3月13日午前2時御水取(閼伽井屋)。3月14日最後の夜。達陀(だったん)の行法。
・芭蕉の句 「水取りや 氷の僧の 沓の音」
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**あとがき**
・京阪地方では、「春はお水取りから」とよくいわれ、広く親しまれている。
・お水取りは、延々、1260年余り、1年も休まず、戦争中もずっと続き守られてきた。火と水と懺悔の修法。密教や神道、修験道、民間習俗や外来の要素まで柔軟に取り入れ、多面性を含む法会として伝えられてきた。
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◎「お水取り」参観
・ガイド:佐藤興治先生
・日時:3月10日(金)午後2時〜8時 (雨天決行)
・行程:近鉄奈良駅−東大寺大仏堂・戒壇院など見学−二月堂(お松明の見学)
・集合・解散時間:(場所・近鉄奈良駅)−集合・午後2時、解散・午後8時(予定)
・参観者募集:約20名(締切:2月10日)
・参加料:200円
・問合せ:常本 携帯090-3990-3907
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