蜜月期を終えたトランプ政権:100日までの道のりと今後の日米関係の行方


・日時:5月16日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:蓑原俊洋先生(神戸大学教授)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2016年米大統領選挙を振り返る
トランプ大統領の苦悩(少数派の大統領)
・一般投票数は、「トランプ」(46.1%)対「ヒラリー」(48.2%)(ヒラリーが約300万票多い)。選挙人獲得数は、「トランプ」304対「ヒラリー」227。(一般投票では約300万票の大差をつけながら、クリントンは敗北を喫した。)

大統領就任から100日経過
2017年1月20日に就任式したトランプ氏第45代米大統領は、4月29日就任100日を迎えた。この100日間は、ハネムーン期間と言われる。トランプ氏は、大統領勝利の原動力となった「ラストベルト」(さびついた工業地帯)で演説し、「美しく偉大な雇用を米国に取り戻している」と実績を誇った。
トランプの公約と実際の政策(就任100日までに計32本の大統領令)
[有言実行]…TPP離脱、NAFTAの再交渉、二国間協議、環境保護政策の撤回、オバマケア廃止、メキシコ国境との壁の建設、移民と犯罪取り締まりの強化等。
[政策の修正・転換]…対イスラエル、対NATO、対ロシア、対中国等。
・32本の大統領令で派手に打ち出したが、実現段階では議会や司法、外交の壁にぶちあって、足踏み状態が続いている。
数字が示すのは「綱引き」と「綱渡り」(政治的基盤は、まだ脆弱)
・足並みがそろっていない、信頼できるのは親族だけ→古豪の共和党員との対立。ホワイトハウスVS連邦議会。政権内の内紛。きわ立つ体制派(軍人、億万長者、ゴールドマンサックス関係者)の存在。
・かつてローマ帝国が衰退期を迎えた際に、「パン」と「サーカス」を民衆に与えれば君臨して統治し続けられると豪語した皇帝たちの姿と重なる。


覇権挑戦期の時代(今後の行方)
第二次大戦後の秩序を構築したアメリカは徐々に衰退期へと突入→挑戦者の台頭によって世界は動乱期へ?
現在の国際秩序に不満を持つ勢力の出現
・中国。ロシア、IS(過激イスラム)
・現状変更の実行…南沙諸島、クリミア
・世界情勢の不安定化と疲弊する民主主義…揺らぐEU、英国、スペイン、トルコ等
・変容するアメリカ外交…「世界の警察官ではない」、「世界の大統領ではない」
・不安定なアジア…民主主義の後進地帯、成熟しない韓国、暴発寸前の北朝鮮など。
三皇帝時代
・三皇帝…トランプ、プーチン、習近平
・中国の台頭…「一帯一路」(21世紀になって、アメリカに代わって中国が枠組みを作っている)

日本の対応
・日本は、まずトランプ氏が型破りな大統領で今まで用いていた定規では測れないという現実を直視することである。(トランプ氏の外交・安保政策が予測不能。)
・日本は世界第3位の経済大国。「自国の利益のみを追求すれば良い」との考えを排し、共通の価値観を有する各国とのつながりを深化させながら、世界システムの安定に寄与するために、積極的に行動すべきだ。(簑原先生)
===============================================================
**あとがき**
・5月11日の新聞記事には、「トランプ氏、FBI コミー長官を解任。〈ロシア疑惑〉隠蔽狙う?」とある。当面、トランプ政権のゆれる情況は続くと思われる。
・トランプ氏は大統領になって、支持率は50%を切っている。政権100日時で、不支持が上回った大統領は、戦後でトランプ氏はただ一人。
・全米の主要都市で、大規模な反トランプ集会デモが展開されているが、これは、アメリカの民主主義がまだまだ堅固である実態。
・1930年代に酷似した混迷の時代に入っているのか?(1930年代の保護主義が、第二次世界大戦の経済的な原因となった。)