「仁徳天皇と河内の開発」

・日時:7月25日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:若井敏明先生(関西大学非常勤講師)
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**前回の講義(復習)−「仁徳天皇の即位をめぐって」(H28年12月)
・仁徳天皇:(390年?〜433年頃)。第16代天皇、その名を大雀命(オオサザキ)と呼ぶ、応神天皇の第4子。父は応神天皇、母は仲姫命(なかつひめ)。。
・応神天皇は、大山守命(オオヤマモリ)、大雀命、菟道稚郎子皇子(ウジノワキイラツコ)の3人の異母兄弟を皇位継承者として重用した。
・【記紀が伝える王位継承の経緯】…応神死後に王位をめぐる紛争が起こった発端は、応神が生前、ワキイラツコを寵愛し、自らの後継者にしようと考えたという。…応神の死後、大山守が王位を狙って動き出し、ワキイラツコを殺害しようとして挙兵にいたる。オオサザキは、そのことを知ってワキイラツコに知らせ、両者の戦いとなって大山守が滅ぼされた。…しかし、記紀は、大山守が滅ぼされた後も、オオサザキとワキイラツコが王位を譲り合ったが、その混乱は、ワキイラツコの死によって解消し、オオサザキが即位することになる。
*仁徳天皇は応神の後継者の第一人者ではなかった、譲り合いで漁夫の利を得たという負い目があった。

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仁徳天皇聖帝伝説(*右に資料を参照)
仁徳天皇というと、聖帝のイメージが強い。それを物語るのが、民の竈に立つ煙と租税の免除をめぐる伝説である。
・(要約)「天皇は高い山に登って、四方の国をみて、「国の中に煙が立たないのは、国が貧しいからである。今から三年間、人民の税負担を免除せよ。」と命じた。そのため宮殿は壊れて雨漏りがしても修理せず、木の箱で雨水を受けるし、雨漏りしていないところに移ったりしている。その後、国の中を見ると煙が満ちている。そこで、人民は富んでるとして、租税徴収を再開。そのため、国民は栄えて、税負担に苦しまなかった。そこで、その時代を賛美して聖帝の世という。」


仁徳朝の土木事業(抜粋)
・『古事記』の伝える諸事業は、秦人を役ちて(渡来人を使役)、茨田堤また茨田三宅を作り、また、丸邇池、依網の池を作り、、難波の堀江を掘りて、海に通わし、また、小椅の江を堀り、墨江の津の造営する。(いずれも河内地方を舞台)。
・「茨田(まんだ)の堤」(右の資料を参照)
『日本書紀』仁徳朝十一年十月条、北の河(淀川)の氾濫を防ぐために、川の南に堤防を築く(茨田の堤)という治水事業である。なかなかの難工事で、人身御供の伝説が語られている。
・「難波堀江の造営」(右の資料を参照)
『日本書紀』仁徳朝十一年四月条、「いまこの国を眺めると、土地は広いが田圃は少ない。また、雨の水は氾濫し、長雨にあうと潮流は陸に上がり、村人は船に頼り、道路は泥に埋まる。群臣はこれをよく見て、あふれた水は海に通じさせ、逆流を防いで田や家を浸さないようにせよ」。(河内湖の水を大坂湾に流して宅地や耕地を安定させる目的があった。そのころ湿地帯が広がって耕地が少なく、川の水が長雨にあえば海の潮が逆流して周囲を水没させてたという。それを防ぐために、海に水路を開いて、逆流をとどめようとした。そのために掘削された堀江が、現在の大阪市を流れる大川である。)

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**あとがき**
・・河内の集中的な開発は、仁徳天皇が難波に王宮を構えたことに関係する。仁徳天皇は、皇子時代から難波に宮を構え、おそらく大阪湾沿岸の港湾施設を管理する任に当たっていたと思われる。
・難波は淀川と大和川が流れ、かつては生駒山地の東に大きな湖もあり、たびたび洪水に悩む地であった。河内平野における水害を防ぎ、また開発を行うために、茨田(寝屋川市付近)に治水用の堤を築き、さらに海に通じる大規模な堀江を堀り、低湿地の水を抜いて耕地を拡大(これが日本最初の大規模土木事業だったとされる)。また、田畑に引く灌漑用水を確保するために、丸邇池や依網池を造り、墨江の港(住吉区)を新設して、水上交通を整備。また茨田には朝廷直轄の穀倉も築造している。
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平成29年前期講座(歴史コース)(3月〜7月:全15回講義)は、7月25日で終了しました。
講師の先生並びに受講生の皆様に厚く御礼申し上げます。
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