地政学から見た現在の国際政治−果たして「ツキデデスの罠」は回避できるのか?

・日時:10月3日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:蓑原俊洋先生(神戸大学教授)
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「ツキデデスの罠」
古代ギリシャのスパルタとアテネの覇権争い・ペロポネス戦争について著したツキデデスから名を借りた仮説を「ツキデデスの罠」という。旧大国と新大国との間では、覇権維持・交代をめぐる攻防が戦争に発展する危険性が極めて高い。
・これは歴史上15回起きたといわれるが、そのうち11回で戦争に発展している。日独伊が米英本位の世界秩序に挑んだ第二次世界大戦。戦後は、72年に及ぶパクス・アメリカーナ(アメリカが圧倒的な軍事力と経済力によって維持してきた平和。米国一極体制。)であるが、今は、中国という挑戦者が現れた。

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国際政治の地殻変動の時代:「覇権挑戦期」
・「変容するアメリカ」…戦後世界をつくったのはアメリカ。しかし、アメリカの影響は、徐々に弱くなってきている。オバマ「世界の警察官ではない」。トランプ「世界の大統領ではない」。
・「現存の国際秩序に不満を持つ勢力の出現」…中国、ロシア、IS(過激イスラム)
・「転落する英国」、「揺らぐEU、トルコ、タイ、モンゴル、フィリピン、ミャンマ-…」
・「不安定なアジア」…民主主義の後進国、不安定な韓国、核を有する北朝鮮
・「日本は?」…日本の80年代は高度成長、安全保障を考えてこなくてよかった(しかし、次の世代に何を残しただろうか)。すべての交渉をアメリカに依頼(日米対等はナンセンス)。

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トランプ大統領の動き
(1)トランプ大統領の苦悩
・クリントンより一般投票は300万票少ない。選挙人獲得は、「トランプ」304対「クリントン」227。
・大統領支持率…40%→36%(過半数を一度も越えられず)(1945年以来での最低の支持率)
・中間選挙を経てどうなるか。次の選挙は2020年。
(2)外交と安全保障政策
・「中東」…トランプの最初の訪問国(サウジ)。イランを敵視。
・「ロシア」…当初考えられていた以上に深刻な状況。北朝鮮と蜜月。
・「中国」…新たな国際秩序の枠組みを提示。習金平時代、「一帯一路」。G2(新型の大国関係)(今後、米中対決は厳しくなる)。
(3)「北朝鮮情勢
・北のICBM実戦配備までの期間を考えると、デッドラインは迫っている。危うい「言葉の戦争」。
・米国の62%が北朝鮮を脅威と認識し、対北朝鮮の軍事行動への支持は、民主党46%、共和党87%。
・戦争の可能性はゼロではない。
・米中両国の関与が必要と、トランプは強調している。
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**あとがき**
◆日本の「今」は…(簑原先生)
・自らの選挙ばかり考えている。こんな時(北朝鮮情勢)に選挙をするのか。
・真のリーダーがいない。
・若い人にとって明るくない。
・少子高齢化
・シルバ−・デモクラシ−(シニアの意見が優先)
◆「責任ある大国」としての日本
日本は今なお自由主義世界においてアメリカに次ぐ第2位の位置を占める。多くの国にとって日本は憧憬の的です。だからこそ「近隣の民主主義の価値観を持つ国々と連携をとり、世界の安全、秩序に関与する姿勢を見せることが大事である」。中国は将来的にアジアから米国の影響力を排除しようと狙っている。日本の役割は大きくなるばかりだろう。(蓑原先生)