恩田陸『蜜蜂と遠雷』-作家の実力と文芸への誠実さ−

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・日時:7月19日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:吉村稠先生(園田学園女子大学名誉教授)
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**恩田 陸(おんだ りく)「略歴」**
1964年、宮城県生まれ。1992年『六番目の小夜子』でデビュ−。
2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。
2017年、『蜜蜂と遠雷』で第156回直木賞と本屋大賞を受賞。
…著書多数。とてつもない読書量と、とてつもないビール量(ビール党)で知られている。
・右上の写真は、『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎、2017年4月第12刷発行)。

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1.芳ケ江国際ピアノコンクール
小説『蜜蜂と遠雷』の舞台は、架空の地方都市、芳ケ江市。3年毎に開催される国際ピアノコンクールに挑む若手ピアニストたちの成長を描く。
2.登場人物
・「風間塵」…養蜂家の父とともに、各地を転々と支自宅にピアノを持たない少年。天才児−カザマ・ジンから刺激、啓蒙を得る主要人物たち。16歳。
・「栄伝亜夜」…天才少女ピアニストとして、栄光と挫折を経験した。20歳。
・「高倉明石」…音大出身だが、今は楽器店勤務のサラリーマンで、コンクール年長制限ギリギリ。芸術と生活の場からピアノ演奏を目指す。28歳。
・「マサル・C・レヴィ・アナトール」…優れた才能を持つ完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院。19歳。
・「その他、数多くの天才たち」が繰り広げる競争という名の自らとの戦い。.
・「審査員」…音楽芸術への多面的刺激、視点を生み出す脇役的人物の魅力。

3. 「第一次予選」「第二次予選」「第三次予選」「本選」という構成
(1)作者恩田陸の音楽芸術への造詣ぶり、取材の努力
・会場の雰囲気の描出…交差する演奏者の意識と聴衆の思惑、表情
・予選一次〜三次までの進行とコンテスタント、会場、聴衆の様々な情景
(2)本選
・各コンテスタントの選曲により構成、創出されるピアノによる音楽的世界の魅力。
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**あとがき**
・今回の小説の学びどころ(吉村先生)…①読者を納得、満足させる作品とは=作者の構想、取材、構成、表現力(文章)等の現場を実感させる。②作家の能力、資質について=単なる興味、関心のひけらかしや商業主義に染まった作家意識ではなく、作家が自身への誠実な向き合いの光景を示しうること。
・恩田陸の作品は初めて読みました(常本)。一次、二次、三次予選と様々な情景がなかなか面白い。音楽の知識が深くなくても、まずこの作品を読むことをお勧めします。
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平成30年前期講座(文学・文芸コース)(3月〜7月:全12回)は、7月19日で終了しました。
講師の先生並びに受講生の皆様に、厚く御礼申し上げます。
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