国宝『源氏物語絵巻』を読み解く〜竹河(二)を中心として〜

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・日時:10月4日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:浅尾広良先生(大阪大谷大学教授)
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○国宝『源氏物語絵巻』について
「源氏物語絵巻」は、紫式部が『源氏物語』を書き綴ってから約100年後の平安時代後期(12世紀前半)に制作された現存する最古の絵巻です。
・本来は「源氏物語」の54帖全体について作成されたと考えられている。
・現存する国宝「源氏物語絵巻」は、絵19面、詞書37面が徳川美術館と五島美術館に所蔵されている。→現存する絵巻は、現在では色が褪せ、剥落が進み、当時の面影はない。⇒国宝源氏物語絵巻の全巻復元プロジェクト(1999年から2005年にかけて、すべての絵巻の復元が完成。)
**国宝『源氏物語絵巻』の講義は、2013年から始め、今回の「竹河(二)」で12回目の講義です。

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第四十四帖 「竹河」 (たけかわ)
前回の「竹河」(一)
・鬚黒(ひげくろ)の亡き後、訪客もなく、近親も疎遠になっていた。妻の玉鬘(たまかずら)は、三人の息子と二人の娘を育て上げたが、娘たちの結婚問題に悩んでいた。
・特に、姉の大君(おおいぎみ)は、その美貌から、帝(みかど)と冷泉院、蔵人少将(夕霧の子)らに求婚され、薫も思いを寄せている。
・薫は、夕刻に玉鬘邸を訪問し、優雅に振る舞い、人々にもてはやされる。
 

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竹河(二)
蔵人少将、薫を羨む。玉鬘、薫の筆跡を誉める
蔵人少将は、大君と結婚したいと思っているが、薫が折々、玉鬘邸を立ち寄ると、皆が薫に好意をもつので、自分は浮かばれず気が弱くなって、恨めしい思いである。
桜花の下、蔵人少将、姫君たちの囲碁を垣間見る
三月なって、桜も盛りの頃、18,9歳に美しく成長した姉妹は、弟の藤侍従が審判役となって碁に興ずる。二人の兄、左近中将・右中弁も見物に加わり、睦まじい語らいが続く。…中将たち兄弟が立ち去り、夕暮れも近くなったので、座を端近に移し、幼児から争ってっていた坪前栽(中庭)の桜の所有権を三本勝負に賭けようと.戯れ、姉妹は再び碁に打ち興ずる。…侍女達もはやし立てているところへ、かねてから大君に思いを寄せている蔵人少将が来合せ、またとない好機とばかりに、そっと身をひそめて、御簾の陰から姫たちを垣間見る。⇒冷泉院に促されて、.玉鬘は大君の参院を急いだ。…大君は、翌年四月には女宮、数年後には.男子にも恵まれるが、周囲の嫉妬がつのり、たびたび面倒なことも起こるので、玉鬘は思うにまかせぬ世を嘆くのでした。

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国宝『源氏物語絵巻』〜竹河(二)〜
右の絵巻は、「竹河(二)」を復元模写したものです。
・図は、春三月の玉鬘邸。左方は、御簾を巻き上げ、碁を打つ姉妹。上手に、左袖を上げ、右手はまさに石を置こうとするのが姉の大君か。…下方の侍女は中君付きの侍女であろうか。正面の侍女二人は、大君付きの侍女か。
・坪前栽の桜は満開である。
・右手前、御簾越しに、姫たちをみつめる蔵人少将。