既存の教育の問題点の一つは、子どもをつねに二分法で見る癖を教師につけさせてしまう点です。

勉強ができる子/できない子。

教師の言うことを聞く子/聞かない子。

行儀のいい子/よくない子。

動作の早い子/のろまな子。

等など・・・

教える側はほぼ例外なく、後者の子どもに対して敵意と軽蔑の意識をもちます。

教師・大人にとってもっとも都合がいいのは、大人しく机に座り、教師に口答えせず、言うことをちゃんと守り、指示を迅速に実行できる子どもです。それは、教師の側の「子どもをちゃんとコントロールしている」という優越感を満足させてくれます。同時にこれらのコントロールがうまくいかなければ、教師は怒りと自己嫌悪感に陥ります。

以前、ある進学塾の職員の人が私に、「最も教えやすいのは、超難関校を目指すクラスではありません。そのクラスの子どもたちは頭がいいので、教師のミスにすぐにつけこんできます。

同じように、中堅や底辺のクラスは、あまり勉強ができないので、もちろん教えにくい。態度も悪い。

一番教えやすいのは、トップから二つ下ぐらいのクラスです。この子たちは、こちらが教えたことをすぐに吸収するし、授業の態度もよく、教師に口答えしません」

と教えてくれたことがあります。

これは、子供に勉強を教えたことのある人にほぼ共通する実感なのだろうと思います。

極端に「勉強ができる」子どもというのは、教師の学力の凡庸さや授業力の程度を容易に見抜くでしょう。

また「勉強ができない」子どもというのは、実は勉強という枠におさまらない大きな個性をもっていて、人間的な魅力を外に表している子が多く、彼らも「勉強しか取り柄のない」教師の人間の小ささを簡単に見抜き、教師の弱点を簡単についてきます。

この子たちは、私たち大人に嫌われる子どもたちですが、それは彼らが豊かな才能や魅力を発揮して生きているからです。

勉強が極端にできる子というのは、兎にも角にも「勉強」という側面での才能を発揮しているのです。それは彼or彼女にとって無駄な経験ではないはずです。

また「勉強ができない」「問題児」の多くは、「勉強」「授業」というものが彼or彼女たちにとって無意味であることが分かっている人たちです。つまり、明確に意識はしていなくても、(幾らかは)自分を生きているのです。だから大人の「勉強しなさい」という言葉にも反応しないのです(しかし、中には中途半端に勉強しようとして、わからなくなって教師や親に反抗する子もいますが、それは彼らが自分で自分のすることをちゃんと選べていないからです)。

これらに対して、一番心配なのは、そこそこ勉強ができて、親や大人の言うことも聞く子どもたちです。

ふつうは大人が見ていて一番安心するのはこの子どもたちです。

しかしこの子たちの一番心配なのは、上の子どもたちと違い、自分のすることを自分で選べていない点です。

勉強ができること自体は悪いことではありませんし、親の言うことを聞くのもそれ自体は悪いことではありません。

問題は、彼らが自分で選んでそうしているかどうかです。

大人を馬鹿にすることが偉いわけではないし、勉強を馬鹿にすることが偉いわけではありません。ただ少なくとも、そうできることは、その子どもの自立性を表してはいます。

しかし平均的に物事をそつなくこなせる人たちは、自分を我慢することに慣れてしまうため、“自分”というものを見失う危険があるのではないでしょうか。

デモクラティックスクールのいいところは、子どもを最初に述べたような二分法で見ない点にあります。強制的に勉強を教えることはないし、強制的に同じ時間に給食を食べさせようともしません。全員強制参加の運動会も音楽会もありません。子どもたちはしたいことをしているのですから、彼らに優劣のレッテルを貼る必要がないのです。

だからデモクラティックスクールでは、子どもたちは大人に反抗するような“問題児”になる必要はありません。

デモクラティックスクールでは、勉強の好きな子は自分一人で勉強していき、必要なことはスタッフに教わります。勉強以外に興味のある子はそのことを追求していきます。

無理がないのです。

デモクラティックスクールが学校の在り方として唯一正しいとは言えないでしょう。個人的には私はそう言いたいのですが、それは傲慢な物言いでしょう。

ただ、どの子どもにとっても、その子に合った成長を成し遂げることができる、それがデモクラティックスクールです。

>>子ども「が」まなぶ 「超」学校。
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