京都府南部のJ市では、介護予防事業として、毎年認知症予防が年間プランに組み込まれている。そのプログラムの一環としてお招きを受け、毎年スリーA方式の予防ゲームを地域の方たちに体験していただいている。
 毎年参加しておられる中のお一人が、年々少しずつ衰えてきておられるようで、主催者の方と一緒に、その方のご近所に教室があれば、と嘆きあっていたのだった。昨年度の最後の日には私共が発行したテキストを買って帰られた。役にたつのかしらと思ってお見送りしたのだった。
 それから4ヶ月後のこと、別の地域での勉強会にその方が顔を見せられたのだ。その顔・姿が、なんと生き生きしている。体の「相」がすっきりと見えた。別人のような印象で目を見張る思いだった。
 その日の勉強会でその方は、ゲームその1の「1から10まで」や、お手玉回しのリズムが立派にこなせていた。不思議な気分だったが、別れ際のお話しによると、以前はご主人が、「お前はぼけてきた、ぼけてきた」と連発されるので、ご自分も「ああ、病院でもどこでも入れてちょうだい」と言いあっていたが、これではいけないと思って、家で一人でできるゲームをずっと練習していたのですよ」といわれたので、二度びっくりした。
 頭のレベルが落ちてくると、やる気をなくして家でぼんやりしがちになる。一人で予防ゲームを毎日のように練習するなんて、ちょっと考えられない。それをご主人の励ましが功を奏したのか、リズム感も立派なものになっていたし、だれもが間違えやすいあの「1から10まで」を見事にこなされ、何よりもお顔が明るく輝いておられるのだった。
 私が、「広告パズルも家で一人でできますよ」と言ったところ、「ああそうですか」とその場でメモ書きされ、「グーチョキパーも練習しますわ」と言われた。
 この報告は決して我田引水ではなく、スリーAの効果だと思いたい。
 スリーAの広報活動をしている中での、取っておきの喜びの一つとなるできごとだった。(高林実結樹)