孟子とんぼ谷(平成21年7月28日)

ありもと@孟子です。。 みなさんこんばんは。。。

本当にしつこい梅雨です。
わんぱく公園は、今朝も雨が降っています。
2005年以来の8月梅雨明けが真実味を帯びて来ました。

ありもとはヤキモキしながら窓の外を見ています。

今日は、遠方から客人を迎える日なのです。
熊野自然保護連絡協議会の南敏行先生がはるばる那智勝浦
町から、わんぱく公園大池と、孟子不動谷のトンボを観察に来
てくれることになっているのです。

和歌山県は、次年度(平成22年度)より、3年計画で和歌山県
レッドデータブックの見直しを行います。
今回の見直し作業は、コンサルタント業者を入れず、県職員と
地元の先生方、そして和歌山県立自然博物館とで行うことに
なっており、南先生はトンボ類の選定委員になっておられるの
です。

わんぱく公園にも、ナニワトンボ、マルタンヤンマ、オグマサナエ
フタスジサナエ等、選定対象種となる種が記録されているし、孟
子不動谷は現在までに66種のトンボ類を記録している通称「孟
子とんぼ谷」なので、観察にいらしてくれたのです。

中でも、溜池環境の少ない南紀では未記録のベニイトトンボ、ナ
ニワトンボの生活している様子を観察しておきたいとおっしゃって
今回、わざわざ海南にやってきてくれるのでした。

そういうわけで、今日は、わんぱく公園大池、孟子不動谷、そして
その間にある、これまた南紀では未記録のムスジイトトンボが多産
する海南市別院観音池を観察していただくということで、ありもとが
案内役を買って出ることになったのでした。

今年度から海南市わんぱく公園の運営をさせていただき、今後わん
ぱく公園を舞台に、海南市の自然の素晴らしさを海南市在住の子ど
もたちを中心に発信していくことを使命としているため、今回南先生
にお会いし、海南市のすぐれたポテンシャルの溜池を案内させてい
ただくことは、とても有意義なことでもあるのです。

9時
わんぱく公園に南先生をお迎えし、まず、わんぱく公園大池の観察
を開始します。

生憎の雨模様に、トンボの出は悪いです。
コシアキトンボ、ウスバキトンボ、オオヤマトンボ、ウチワヤンマ等は
何とか出てくれますが、肝腎のナニワトンボの姿はありません。
いつもはわんぱくの森トレイル沿いの樹の梢に、ごく普通に休んでい
るのですが、そぼ降る雨を嫌うのか、今日は隠れてしまっています。

しかし、替わりに「サプライズ」が起きました。
何と、今まで未記録の、ベニイトトンボが出たのです。
わんぱく公園28種目の記録です。
スイレンの谷の周辺の環境が、ベニイトトンボが出そうな環境なので
、さがしていたものの、今日まで確認ができずにいましたが今日、美
しい♂の半成熟個体を確認したのでした。

これでいよいよわんぱく公園大池のトンボ相が特筆すべきものにな
ってきました。

30分強、わんぱく公園大池周辺を観察し、リスアカネ、モノサシトン
ボ、クロイトトンボ、チョウトンボ等を確認した後、南先生の愛車に同
乗させていただき、一路北野上を目指します。

まず訪れたのが海南市別院観音池。
ムスジイトトンボが多産する溜池です。
池の堤に到着するやいなや、堤の草地にたくさんの♂成熟個体が
確認できました。
池面に浮かぶカナダモに♂♀連結で産卵しているペアもたくさんお
り、今年も健在でありもともひと安心です。

南先生も写真を撮影したり、採集してルーペで、目の後の特徴的
な斑紋の配列を確認し「図鑑通りのわかりやるい配列ですね。こ
れで南紀串本周辺で溜池を探して、探索してみます」とうれしそう
です。

この生息地を発見した藤田昂己君によると、北野上地区で、こ
れほど本種が多産しているのはこの池だけで、あとは下津野の
池で1頭採集しただけだとのことです。
なぜこの観音池だけにポツンの多産しているのか?
本当に謎が深まります。
イトトンボのような小さくて移動距離がそれほどでないと思われる
トンボのグループは、今年孟子で久々に確認されたアオヤンマ
が属するヤンマ類などと違って、周辺部にある程度連続的な分
布を示すのが普通なのに、とても不思議です。

下津野に少数分布する溜池があるということは、何らかの理由
で侵入してきた個体群が、最も環境が合致し、競争相手の少な
かった観音池で一気に増殖したと考えるのが妥当なのかもしれ
ません。
いずれにせよ現在海南市で唯一見つかっているとても貴重な場
所なので、第一発見者の藤田君に敬意を表する意味でも今後も
継続モニタリングをし、南先生を通じて和歌山県レッドデータブッ
クに反映していただきたいと思いました。

ムスジイトトンボとの嬉しい出会いを胸に、いよいよ孟子不動谷
に到着です。
入口水田の上を優雅に飛翔する、チョウトンボの♂が出迎えて
くれました。

久々に犬飼池への登り道を歩きます。
羽化したばかりのヒメアカネが、あしもとでたくさん飛んでいます。
日本最少のアカトンボで、湿地性の種です。

犬飼池では、池面をオオヤマトンボが勇ましく飛んでいます。
ここはわんぱく公園でフラれた、ナニワトンボを確認するラストチ
ャンスの場所です。
遠路はるばるナニワトンボを見に来られた南先生のためにも、
何とか見つけようと、ネザサ藪をかき分け、普段はほとんど行
かない池畔に降ります。

リスアカネが結構見れますが、目的のナニワトンボはなかなか
見つかりません。
でも何とか「執念」で探して、1頭、成熟♂を確認しました。
「小さいですねぇ」
南先生も嬉しそうに撮影しておられます。
ありもとも何とか見ていただくことができ、本当にほっとします。
天気の良い日なら、もっと簡単に見つかるのに、雨模様の日
は、なかなか出辛いので、やっぱり困ります。

南先生も、コウチュウ類専門で長く昆虫を研究されている方
なので、自然の中の昆虫は見られないことも多々あることは
十分理解しておられ「今回見られなくても、また条件の良い日
に観察に来ますよ」とやさしく言っていただけるのですが、や
はり那智勝浦町という遠路はるばるの来訪でもあり、何とか
確認していただきたいという気持ちが、ありもとに強くあった
ので、今回の目的の3種を何とか確認できて、ほっとしました。

漸くプレッシャーから解放され、あとは「孟子とんぼ谷」を堪能
していただくべく、水路道を歩きます。
パラパラ、パラパラとハグロトンボが飛びかいます。
猛暑の日なら、ヤブヤンマやマルタンヤンマが休んでいること
が多いのですが、今日は雨模様ですずしいので、ヤンマの姿
がありません。

やきもきしながら丸嶋水田まで来ると、畦に沿う水路で、ネア
カヨシヤンマが産卵しています。
ネアカヨシヤンマは、全国的希少種として知られる湿地性の
大型ヤンマで、環境省レッドリストに記載があり、今回の和
歌山県レッドデータブック改訂で、追加選定種に挙げられてい
る種です。

南紀でも記録はあるものの少なく、なかなか出会うことのでき
ないネアカヨシヤンマの登場に、南先生も感動しておられます。

♀のネアカヨシヤンマは、落ち着きなく、低く飛び回り、時折
草地に降りては、土の中や倒木の中に産卵管を挿入し、産卵
をしていました。

とんぼ池でベニイトトンボを観察し、2頭の♂個体を採集され、
天堤池で、ウチワヤンマVS.タイワンウチワヤンマVS.オオ
ヤマトンボVS.ギンヤンマの見ごたえのあるバトルを観察し、
結局21種類のトンボを観察して、孟子とんぼ谷観察を終えま
した。

今年はトンボの種数は出ている(今日で41種確認)ものの、
トンボの個体数は少なく、観察は結構大変でしたが、何とか
夏のトンボの大部分を観察していただくことができ、本当に
ほっとしました。

わんぱく公園駐車場で南先生を見送り、ゲートを閉めるため
にトレイルを歩いていると、朝は見られなかった梢の先に、
♂のナニワトンボが止まっていました。
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<わんぱく公園>
クロイトトンボ、ベニイトトンボ、モノサシトンボ、ウチワヤンマ
タイワンウチワヤンマ、オオヤマトンボ、ギンヤンマ、シオカ
ラトンボ、オオシオカラトンボ、リスアカネ、ナニワトンボ、コシ
アキトンボ、チョウトンボ、ウスバキトンボ
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<別院観音池>
ムスジイトトンボ、モノサシトンボ、タイワンウチワヤンマ、ギ
ンヤンマ、オオヤマトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトン
ボ、ショウジョウトンボ、ネキトンボ、ヒメアカネ、コシアキトン
ボ、チョウトンボ
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<孟子不動谷>
キイトトンボ、ベニイトトンボ、クロイトトンボ、モノサシトンボ
ハグロトンボ、ウチワヤンマ、タイワンウチワヤンマ、オニ
ヤンマ、ネアカヨシヤンマ、ヤブヤンマ、ギンヤンマ、オオヤ
マトンボ、ハラビロトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトン
ボ、ショウジョウトンボ、ヒメアカネ、ナニワトンボ、コシアキ
トンボ、ウスバキトンボ、チョウトンボ
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