認知症予防ゲームの中で、「グーパー」を使って、指や手の運動をします。何故「グーパー」なのか?
〔グーパーが大切なわけ〕 赤松ふさ枝(看護師)
≪幼児教育の側面から≫
人間は生まれてきた時、手をしっかりと握りしめ 拳を胸に抱え込むようにしている 赤ちゃんもいれば、ファーと指を伸ばし 手を広げている 赤ちゃんもいる。しっかりした拳の力強い把握反射を持って生まれてきた赤ちゃんは、手の動きを教えやすい赤ちゃんです。
なぜなら、握った拳に お母さんの指などを差し込んで引き上げると、全身の重さをかけても、手のひらが開かないほどの 強さがあるのです。
この反射は 手の働きかけに大切です。
一方 手をパーとしている赤ちゃんには、まず 握るということをうながす働きかけがいります。
握る事を覚えさせる時、 手のひらを押すと、指先が曲がってくる、手のひらの中心部を折り曲げるように強く圧してやると、手は握ろうとする。逆に手の甲側を手首から指先にさすると、手がひらくようになる。手の甲、手のひらにふれながら、やさしく声かけして、指の曲げ伸ばしを 繰り返すことで時間はかかるが 上手な拳をつくれるようになる。
「把握反射」を通して、正しい握り方に必要な筋肉の力をつけることで、手を使うという学習が早くより正確にマスターでき、その刺激が優れた脳を育てることに繋がっていくのです。
(足も把握反射があり、土踏まずを圧すと指が曲がる、これが2足歩行に繋がる働きである。)
把握反射は、生まれつき備わっている神経回路が働いて起こります。
生後1ヶ月半ほどでなくなる この反射を利用して、最初からグーの子でも、拳を作る訓練をした子でも、手を使うことによって刺激され、いろんな神経の繋がりによる回路が、手を動かし、前頭葉を刺激し、手も器用になるし、優れた脳にすることにも繋がるのです。
幼児期に親が、側で見せながらいろんな手や指の動きを教える、その時に一緒に歌を歌えばさらに効果がある。
以上の見解は、神経科学の研究をしてこられた久保田競先生(京都大学名誉教授・日本福祉大学教授・大脳生理学者・医学博士)が、著書『優れた脳に育てる』という本の中で書かれています。
≪神経回路≫
神経回路とは、ニューロン(神経細胞)が継ぎ目シナプスを介して(ここで伝達物質が分泌され)、次につながるニューロンにシナプス電位と神経活動を起こします。
≪手と脳の関係≫
「手でボールを落とさないように握る」
手 ボールに触れた感覚情報
→手の体性感覚野 感覚で得た情報を
→手の体性感覚連合野(前頭葉)
どんな物か、どのように持てばよいのかなどの情報をまとめ、どんな行動をするのかを決め、プログラムを作る。このプログラムを
→運動連合野
このプログラムから感覚情報を運動情報に変換して指令を
→手の運動野
運動を起こす指令を受け、握れという指令を
→手の筋肉
手は、ボールを落とさないようににぎる という動作を起こす
繰り返し手を動かし この回路を働かせることで、回路の反応は敏感になり、動作がよみがえり、記憶され、赤ちゃんがおもちゃで遊ぶことが出来るように この回路を働かせると、手や指の動きも 回復できるようになるはずです。
子供も大人も、ニューロンがつながって出来ている回路は、使うと働くようになり、使わないと働かなくなるのです。
≪ゲームの役割について≫
スリーAの脳を活性化させるゲーム
「ゲーム(その1)の6種の手と指」
「お手玉回しでの手のひらへの刺激」
「ドジョウさんでの指と手のひらへの刺激」
「広告パズルで紙を破る手」
「追っかけ将棋のコマを両手で振る、コマを握る刺激」
「シーツ玉入れでのシーツを握る手」
「ジャンケンたすき取りゲームでリボンを摘む手」
「風船サッカーでの足の動き」
これらのゲームでの、手や指の刺激は、特に前頭葉が活性化されると思います。
握る、つまむ、1本1本の指、はじく、引っぱる、はさむ、おもちゃを持つ、道具を使う、鉛筆の持ち方、等々
手が動くためのメカニズムを知り、脳を活性化させることは、認知症の予防・認知症からの引き戻し、老化防止、又、失われつつある手や足の機能回復のためのヒントにも大切な事なのです。
スリーA教室では簡単なゲームを繰り返し自然に馴れていただき、お仲間さんと歌を歌い、お話をしながら、楽しい時間を過ごします。すぐに料理はできなくても、手や指への刺激が繰り返される事で、手の動きがよみがえってくるのです。
しっかりと握る事が出来るようになれば手の筋肉が戻り、手は動きやすくなって来ます。
気持が明るくなり、前向きになって、毛糸の編み針が扱える、自慢のおせち料理を作れるようになったという声も聞かれました。
スリーAのゲームを体験し、今後 高齢者の集まりなどで ゲームを活用して行かれるとき、このようなことを、頭の隅に置いてすすめていただくことで、その効果が大きなものになってほしいと思います。