.農地が消える/2 どうして農地を手放すの?

.農地が消える/2 どうして農地を手放すの?

 農家を古くからやっている人が多いけど、なぜ農地を手放すのかしら?

 日本の農業が立ち行かない状況に追い込まれていることが関係しているんだ。

 ◇安くなった米の価格
 国内で作られている米の価格は年々下がっている。米は国内で作られている量だけで、日本人全体の必要分を満たしている。むしろ余らせないため、農家は決められた面積について稲を育ててはいけないことになっているほど。そこへ安い外国産が出回りはじめ、市場に流通する米の量が増えた。そのため、取り引きで米の価格が下がる傾向にある。

 ◇8時間働いて「時給」179円
 米の価格が下がれば農家のもうけが少なくなる。農林水産省によると、1日8時間働いたことに対して農家の1家族が得られるお金は、2007年の全国平均で1430円だった。時給でたった179円にしかならない。この金額は年々下がっている。1995年の1059円から見れば17%程度にまで落ち込んでいる。

 ◇高齢化…でも子に継がせない
 1985年に437万6000戸あった農家は、2005年には284万8000戸に減った。農業で働く人の中で65歳以上の割合が増え続けている。高齢になると、体力が必要な作業や大型の農機具を扱うことが難しくなり、農業が続けられなくなる。そのため、荒れたままの耕作放棄地にしてしまうケースがある。

 農家の仕事を子どもに引き継がないケースもある。また、農地を持っていると税金の支払いが発生するため、農地を売ったお金を税金の支払いにあてる農家もある。

 ◇押し寄せる輸入米 自由貿易の波
 政府は長年、農作物の輸入を制限し、主食である米の価格を安定させてきた。

 しかし、1955年、日本は自由貿易の国際ルール「関税貿易一般協定(ガット)」によって話し合いに参加(ガットは後に95年に国際機関「世界貿易機関(WTO)」となった)。

 86年からは、農作物の輸出や輸入のあり方について各国と話し合いを続けてきた(ウルグアイ・ラウンドという)。93年、日本は、これまで輸入しなかった米を最低限の量に限って買い入れることに踏み切った。この輸入米を「ミニマムアクセス米」といい、95年から出回っている。

ニュースがわかる 2009年5月号