日 時 平成22年3月23日(火)
場 所 甲東公民館
講 師 山内英正氏(甲陽学院高校教諭)
万葉集には、春の訪れを告げる花「ヤマブキ」を詠んだものが
17首あるとのことで、その主なものを教えていただきました。
ヤマブキは、万葉集では山吹(3首)・山振(6首)の他、夜麻
夫伎・夜麻夫枳・夜末夫吉・也麻夫支とも表現されている由に
て、これは万葉かな特有の「一字一音」によるあて字が影響し
ているとか。
歌の種類としましては、”雑歌”・”相聞(恋・友情・兄弟愛等)”・”挽歌(葬送)”等々があり、ヤマブキはこれらに歌いこまれているとのこと。
たとえば「花咲きて 実は成らねども 長き日に 思ほゆるかも 山吹の花」(卷10−1860)は、八重ヤマブキの花の咲くのを待ちわびていると解釈すれば”雑歌”ですが、実(恋)が成らないとのたとえであれば、”相聞”ということになります。
また挽歌としましては、高市皇子(天武天皇の長男)が十市皇女(額田王の娘)の死に歌三首を作っている内の一首に「山吹の 立ちよそいたる 山清水 汲みに行かめど 道の知らなく」(卷2−178)があり、これは「山清水」とは、あの世の「黄泉」を指していると思われ、ヤマブキの黄色をかけたもののようです。
それにしても、「ヤマブキ」の歌の大半が大伴家持およびその周辺の人に多いということですが、これはただ単に偶然のなせるわざだけなのでしょうか。