日 時 平成22年3月26日(金)
場 所 TOYRO倶楽部
講 師 大久保恭子氏(関西外国語大学教授)
ナポレオンの首席画家で、あの「皇帝ナポレオン1世と皇后
ジョセフィーヌの戴冠」(ルーブル美術館)を描いたダヴィッドの
絵に隠されたメッセージを読み解くセミナーがありました。
ダヴィッドは、それまでのロココ調を「貴族のお遊びでアート
ではない。」と否定し、ギリシャ・ローマ芸術に重きを置いた、
いわゆる新古典主義の画家として台頭いたしました。
したがいまして代表作にはローマを意識したものも多く、「ホラティウス兄弟の誓い」や「息子の遺骸を迎えるブルータス」等々があり、古代の彫刻を思わせるこれらの作品が世の芸術家達を驚かせました。
またフランス革命時にはジャコバン党員として深く政治にかかわりましたが、共和制を急ぐあまり恐怖政治を行った政府が没落するといち早く革命児ナポレオンに接近し、ついに首席画家に出世いたします。
さて彼を不動の画家としました前述の”戴冠”ですが、本来ならナポレオンの戴冠がメインで、これを描くのが本筋ですが、下書きのデッサンによれば、ナポレオンは教皇から冠を取って自分で自分にかぶせようとしています。
ナポレオンは神から授かった王位ではなく、自らが勝ち取ったものであることを示したかったのでしょうが、それではあまりにも横柄で到底パリ市民に受け入れられないと悟ったダヴィッドは、冠をナポレオンがジュセフィーヌにかぶせる構図として彼の意思表示を表現しながら、世間の抵抗をかわすことに成功したのでした。 このナポレオンの意志こそが、正にこの大作に隠されたメッセージだったようです。