井手町での認知症予防講演会

6月12日。認知症予防講演に、井手町のミニサロン「和み会」から招かれて、行ってきました。北部区公民館の広間で、44人が一つの輪に坐って始まりました。

1時間あまりの中の15分ほどで、「認知症予防のために、どのように暮らして行けば良いか」を話し、残りの時間をスリーAの予防ゲーム紹介を、とのご依頼でした。このように「暮らし方」(生き方)の指針を語れ…というようなご希望を受けたのは初めてでした。

あちこちでやっている予防教室のようにゲームを楽しんで頂いて「さようなら」では、「ああ面白かった」だけで一過性に終わり「暮らし方」ではない。短時間で満足していただける話をしなければなりません。
参加者は75歳〜91歳までとのことでした。高齢で聞こえにくい方もおられるそうで、マイクの用意もありました。
なぜ認知症予防になるのか、スリーAの意味、何をしたらどのような成果があるのか、具体的に、ごく手短にその三つを話しました。

ゲームはいつもの通りに、「その1」の「1から10まで」親指から順に指を折って数を数える、ゲームともルールとも言いがたい簡単なウォーミングアップの指の運動をまずします。そこで私は専門職向けの講習会と同じ内容の解説をしっかり入れました。

1から10までを皆で揃って大きな声をあげながら指折り数える事の意味と、間違えようも無い簡単なことですが、終わった瞬間に「上手にできましたぁ」とすかさず褒める意味と効果についてお話しました。75歳以上後期高齢者と言われる方たちが皆一様に目を見開いて聞き入ってくださいました。手ごたえ一本(!)です。

次に「今度は早くしますよ」と声で皆さんを励まして速度を上げて、1から10まで数えました。かなりのスピードアップにしましたが意欲満々に取組まれたので思わず本気で、「綺麗に揃いましたぁ」と今度は言葉を替えて褒めましたところ、大半の方が笑われて部屋中がすっかり和みました。

この和みが脳活性化の始まりで、認知症になった方は心を閉ざして、写真に写る萎縮した脳だけでなく、心が萎縮しておられます。その方たちの心が、たったこれだけのゲームでも褒められることで、頬の筋肉がちょっと緩む、それが萎縮した心を和らげるきっかけになるのです。

ゲームは少しずつ運動量が増え、ルールも少しずつ難しくなっていく。間違えてもそれは失敗ではない。「こんな簡単なことを間違えるな〜」と、おのずと一生懸命になる。そのことで頭の中は血流促進になる。
滞りがちだった脳が動き出す。一生懸命に集中するということが日常殆どなくなって来ているところに、スリーAの予防ゲームで頭が働きだす、そのよい刺激のキッカケを作るのが最初の“褒め言葉”なのだ。
①ルールを覚えて新しいことを一生懸命に記憶する
②普段はしていない指や腕の運動になっていく
③皆と一緒に数を数えるので大きな発声をする
④皆と外れないように皆の声とあわせるから聴力神経の刺激にもなる
⑤間違えても、皆も間違えているから安心して心底から大笑いができる
⑥ちょっと出来たら褒めてもらえるから嬉しくなり、それが癒しになる

「兎と亀」とか、「でんでんむし」とか簡単な、1分もかからない短い歌のゲームが、間違えて面白いからこそ皆でできるのであって、もし指の運動が頭に良いからと言われても、グーパーグーパーと家で一人ではおもしろくもないでしょう。皆でするスリーAの認知症予防ゲームは自然に笑いが起こるように考えられているから、脳の活性化に効果が出るのです。

ゲームは簡単ですから、ひとつでも二つでも、そういわないで三つか四つか覚えて帰ってください。でないともったいない。せっかく今日一緒にゲームを体験したのだから覚えて帰ってください。
そうして近所の方とお茶でもご一緒される時や、親類の方と一緒になったとき、5分でも10分でも時間があったら、
「認知症の予防ゲームを習ってきたんや、こんなのや」
と言って一緒にしてください。
「必ずそのときには、上手にできました」。
次は
「綺麗に揃いました〜、と言って褒めるのが大事やそうな」
と言って褒め言葉を言ってください。
「そうしたら一緒に笑えてしまうから、認知症予防の効果になるのやそうな」
と、これも言って教えてあげてください。

…、と私は一生懸命にお願いしました。75歳〜91歳の方々が耳をそばだてるように聞いてくださった様子が、とても印象深い勉強会となりました。
後期高齢者の皆さんがすっかりやる気を顔に浮かべてくださって、参加者さんも講師の私も、とても充実した気分で一時間そこそこの勉強会を終わったのです。

「心に念ずれば必ず成る」という言葉がありますが、この言葉を思い出しながらJR各駅停車に揺られながら田園地帯を縫って、のんびりと帰宅しました。
井手町でスリーAの予防ゲームが広く活用されますように。
(高林実結樹)