日 時 平成22年7月31日(土)
場 所 川西高等学校・宝塚良元分校
講 師 藤本英二氏(川西高等学校教諭)
1997年に神戸で起こった少年Aの異常な殺傷事件に文学界
がどう影響を受けたかについて解き明かして下さいました。
まずは少年Aの手記である「懲役13年」についてですが、当初
これがマスコミによって紹介された時の評価は、「高度で文学的、
パクリでなければ恐ろしい才能」「文学的才能の高度さ」と絶賛さ
れましたが、時を経るにしたがい「他の書物の良いとこ取り」「大人のマネをして背伸びしようとしている」との声が大きくなり、決して文学少年ではなかったとの評になりました。
また関係者の書いたものとしましては、両親(+森下香坂)の「少年A・この子を生んで」とか子供を殺された親の「淳」等があり、取材に基づくものでは「少年」(毎日新聞)や「暗い森」(朝日新聞)等があります。
その他、精神科医や有識者等も多数書いたり発言したりしておられますが、この事件に最も影響されて創作されたのが、柳美里の「ゴールド・ラッシュ」であるとか。
この小説は、少年の父は金儲けに、母は宗教で家出、兄は知的障害者、姉は援助交際と一家がバラバラになり、少年が父を殺してしまうというものです。
しかし恋人の「私は人を殺してはいけないと思う。私を信じて。」の言葉に、少年が自首を決意するというフィニッシュで、ドストエフスキーの「罪と罰」を彷彿とさせる内容です。
因みに、柳美里も少女時代は不登校で、また一家離散も経験しており、フィクションとノンフィクションが微妙に混在していると言えます。
すなわち、事件(事実)⇔罪と罰(小説)⇔私的経験(事実)のサンドイッチ小説なのです。