村上春樹と阪神間の文化

日 時 平成22年10月20日(水)
場 所 神戸女学院大学
講 師 打田 樹氏(神戸女学院大学教授)
 世界で今一番人気が高く、評価の高い日本人作家・村上春樹は、
幼少時に阪神間で育ったことに鑑み、その足跡や影響につきまし
て語っていただきました。
 まず阪神間での足跡ですが、小学校は西宮市立浜脇小学校に
入学するも、新設の西宮市立香櫨園小学校に移り、中学校は芦屋
市立精道中学校へ通学しました。
 高等学校は、六甲山の麓にある兵庫県立神戸高等学校に入り、卒業後 大学は上京して当時学園紛争の激しかった早稲田大学に入りました。
 神戸のシティボーイ(典型的な阪神間少年)が、いきなり学園紛争に巻き込まれ、ここで最初の日本の本質を見たのではないでしょうか。 社会へ出てからの活躍は周知のとおりで、次々とベストセラーを生み出し、国民の読書熱を高めるのに一役買っています。
 しかし、作品が売れたからと言っても必ずしも順風満帆であったわけではなく、それなりに「村上バッシング」にも晒されましたが、これもまた長期的には質的向上に繋がったのではと思われます。
 たとえば「ノルウェーの森」においても、「ローカリティがない。もっと生々しくなければ(土着性、地域性に乏しい)」等の憎悪的批判もあったようですが、作品そのものは高い評価を得ています。
 村上少年にとって「阪神間」とは、食べ物も美味しいし、環境も良く、何の不快感もないのですが、何か心の中に物足りなさを感じた所であったようですが、前述のローカリティ云々は、神戸の街でアメリカ文化に触れ、これにより乗り越えたのではと思われます。