孕石さんの「背広をメッタ切り・アート」

神戸の高台にあるtokoroギャラリーで出会った彦根のアーティスト孕石さんの作品にぶつかったとき、電撃が走った。こんな大人を子どもたちに合わせてみたい。いつものことだが、子どもたちに「いい大人」を提供するのが、ボクらスタッフの仕事だと思っているから、さっそく交渉。しばらくして、彦根からドサッと古い背広が宅配で送られてきた。「裁ちばさみだけ準備しておいてください。ザクザクたのしみましょう!」とのことでした。

 「アートの時間」当日。子どもたちもスタッフも興味津津。ボクの前宣伝が過激過ぎたかなという心配を払拭するような、孕石さんのユニークな服装での登場に、ひそかにボクは胸をなでおろす。さらに背広を広げる前に、突然一人芝居が始まり、子どもたちはどうしていいのか、唖然。そういう時間こそが「アート」なんだとボクだけが納得。最初はこわごわ背広にハサミを入れていた少女たちも(なぜか男たちはいつのまにか消えて)、孕石さんのエールに答えるように大胆になり、ザックザックの快感を楽しんだようです。どうみてもチンドンヤのようなデタラメな服装で、アーティスト孕石さんはいっぱいの笑顔を子どもたちの心に残して、消えていった。