湧水湿地の重要性と保全の必要性

日 時 平成23年2月19日(土)13:35〜14:35
場 所 神戸大学百年記念館 六甲ホール
講 師 下田路子氏(冨士常葉大学教授)
 湿地とは、天然のものか人工のものか、永続的なものか一時的
なものかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水
か汽水(淡水+海水)か鹹水(海水)かを問わず、沼沢地、湿地、
泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が6mを超えない海
域を含む。湿原は泥炭地に形成された草原と定義され、低層・中
間・高層湿原に分けられている。また湧水湿地では泥炭層の形成は見られないが、植生は湿原と同様として示されている。湿原は泥炭地の表現上のものであるが一般的には必ずしも泥炭の有無を意識しないで広い意味で使われている。湧水湿地とは泥炭が堆積せず、湧水に涵養されている緩斜面に形成されて、東海地方から西日本にかけて広く分布している。
湧水は不透水層により浸透を妨げられた地下水が湧出したもので、通常は貧栄養で弱酸性である。他の湿地よりも規模が小さく、ヌマガヤ、イヌノハナヒゲ類、ホシクサ類、食虫植物のモウセンゴケ・ミミカキグサ類などの特有な植生群が成育し、ハッチョウトンボの主な生息地でもある。またハンノキ・サクラバハンノキ・シデコブシ等の湿地林も見られる。植物は、泥炭地の湿原にも育成するものが多い。湧水湿地は特有の生息・成育の場となっており、湿地の価値のうちの生物多様性を有する場としての重要性が大きく土地開発などの人の活動が原因で、失われたりして本来の良好な状態が損なわれてきている。一方では山林の利用がなくなり植生遷移によって日当たりが悪くなり木本植物の進入が進み、湧水湿地特有の植物が減少あるいは消滅する植生変化が認められるので湧水湿地の状況に応じた様々な保全対策が求められている。(湿原写真:ネット)