「こうもり」誕生とその時代

日 時 平成23年4月14日(木)
場 所 兵庫県立芸術文化センター
講 師 石戸谷結子氏(音楽ジャーナリスト)
 今夏に企画されています佐渡 裕氏プロデユースのオペレッタ
の傑作「こうもり」について、プレ・レクチャー(全3回)の第1回目
が催されました。
 この「こうもり」は、1874年にあのベートーベンの「フェディリオ」
やモーツアルトの「魔笛」さらにレハールの「メリーウイドウ」等が
初演されたアン・デア・ウィーン劇場で初演され、爆発的な人気を博しました。
 なぜこの陽気なオペレッタが大成功したのかにつきましては、作曲家ヨハン・シュトラウスⅡの才能はもちろんのことですが、実はその前年に斜陽傾向にあったハプスブルグ家(皇帝:フランツ・ヨーゼフ)がその威信をかけて万国博覧会を催したにもかかわらず、わずかその8日後に株が大暴落して経済大恐慌が起こったことも微妙に影響しています。
 たとえば第1幕のロザリンデ(ヒロイン)とアルフレード(元カレ)の二重唱「さあ、早く飲もう」は、「どうしようもないことを、忘れることができる人間は幸せ」と歌う歌詞が時代にマッチしたとか。
 このデュエットとカルロス・クライバーの舞うような指揮による序曲も映像で見せていただきました。
 また、ナポレオン失脚後のヨーロッパをどのようにするかを話合うウィーン会議が開かれましたが、ここで主導権をにぎりたいメッテルニヒの策謀によって「会議は踊る、されど進まず。」の状態が続き、結局何も決まらないまま散会してしまいます。
 「こうもり」のフィナーレも、「妻の浮気も、夫の火遊びも、それはみんなシャンパンのせい。」と他人事で終わつてしまうのも、何だか時代を反映しているようですね。