小説とその歴史の不思議

日 時 平成23年5月31日(火)
場 所 西宮大学交流センター
講 師 岩松正洋氏(関西学院大学教授)
 小説は物語の一種であり、その物語のスタートは紀元1〜2
世紀頃のギリシャ語やラテン語で書かれたものらしい。(古典)
 また小説はアートであり娯楽であると同時に商品でもあります。
 当初は、写本により作者の周辺のごく少ない人達にだけ読ま
れており、中味も写し手の誤写やアレンジにより、少しずつ内容
も異なりましたが、15世紀にグーデンベルクが活版印刷を発明するや、大量生産が可能になります。
 さらに貨幣経済が安定し、産業革命によって物流等が発展しますと今日のように不特定多数の読者が生まれるに至ります。
 日本の近代小説のはじまりは、二葉亭四迷の「浮雲」であり、田山花袋の「蒲団」であると言われていますが、当時はまだ高学歴の人も少なく、また字が読めない人も居たりして、本はまだまだ高級品というイメージでした。
 ところが大正末期にあの関東大震災が起きて書籍や版が大量に消失したため、出版社は世界文学全集や日本文学全集を従来より安価で市場に投入したところ、たちまち一大本ブームが起こりました。
 そして昭和に入るやコンパクトで、より安価で、好きなものだけバラ買いの出来る文庫本が発売されることになります。
 しかし歴史は「書籍・映画・ラジオ・演劇」から「マンガ・テレビ」を経て「インターネット」の時代となり、今や活字は衰退の一途です。
 今それでも本を熱心に読んでいる人は、本当に本の好きな人だと言えるのではないでしょうか。