長期ひきこもりにとっての就労への捉え方について:その2

◇◆でも深刻にとらえ過ぎると
 それだけで疲れ、まいってしまう
◆◇

ただ、松尾の場合、少しちがうところは、
医療と福祉とそれから地域のシステムを
利用させていただいた、ということでしょうか。

ふとしたきっかけで、地域の高齢者の方の集う会に
ボランティアとして通わせて頂くようになり、
おじいちゃん、おばあちゃん、ボランティアのお母さん方に
何かといろいろかまって頂いたという経緯・経験があります。

こちらは社会的常識がありませんので、
失敗も数多くするのですが、地域の人々が
その個人を見放さなければ、その個人にはチャンスが何度も与えられ、
そうこうしていくうちに、徐々にではありますが、社会的常識もソーシャルスキルも
身に着いていき、服薬による病状の回復もかさなり、
人間としてリスタートできるのだと思うのですね。

松尾が地域ケアの大切さを感じるのは、
松尾自身が地域ケアで助けられ、そのサポート体制の中で
医療と併合して、回復してきたからです。
たしかに世間一般的にみたら、38歳でフリーターなんてと
お考えになるでしょうが、『生活をどうしていく?』
というレベルで捉えるべき、長期ひきこもりの青年が
(しかも病状は相当悪かった人間が)、リスタートできているのです。

地域ケアの恩恵を受けてきたから、
その重要性を大切にしているのだと思います。

話が少しずれましたが、
医療と福祉の併合的(統合的)サポートによる
長期ひきこもり者の自立(もちろん、経済的という意味ではなく)への道

福祉という分野を用いるのならば、
福祉的就労(作業所等)も合わせ、考えるという視点もあるかと思います。
阪神北エリアで言うならば、
様々な生きづらさを持つ人々の新しい就労という視点で
事業を展開されている「株式会社エコミュ」さんもがんばっていますね。

精神障害者手帳をとらなくても、福祉的就労はできます。
世間体や自分自身の葛藤やいろいろな要因
(これも生きづらさだと思います)で、どうしても福祉的就労に
就きづらいという方(ご家族を含め)も多いかと思います。

考え方の転換ひとつなんですよね。
ずっと受けなくてもいいという考え方もあるでしょうし、
様々なスキルを身につけるという場所であり、
今の今通う居場所と捉えたり、

それってずるい考え方かもしれませんが、
そのずるさも人間のうちなのです。
そしてそのずるさで受け始めた福祉的支援の場で
ご家族を含め、つながり(ネットワーク)が拡がったりすることもある、
世の中・人生とは何がどこでどう転がるか、わからないのですね。

10年以上に及ぶ、長期ひきこもりの
今後の生活の見通し方についてお話してきました。
医療(お薬)と福祉(生活習慣の取得)をベースに
医療と福祉や民間のサポートをうまく受け続ける
そして、その中でのつながりを上手く今後に結びつける。

親亡き後も生活できるためにです。
生活とは生存ではなく、ライフを楽しむものなのです。
病気と付き合ったり、
性格・性質の傾向と付き合っていく部分は個々人の差はあっても、
いくらでも人生を楽しむことはできます。
仕事も恋愛も結婚もできます。
そのためにどうしていくかが、ライフマネジメントなのかも
しれませんし、そのためのトータル的なサポートが必要な部分が
出てくるのかもしれません。

ご家族だけで立ち向かうことは絶対にありませんし、
(じっさいは長期にわたるひきこもりの問題により疲れ果て、
 立ち向かう地力も気力もなくなっているケースが多いかと思います。)
そのために現在でも利用できる制度等は
たくさんあるということなのですね。

一歩踏み出すためには、気持ちの整理や勇気が必要ですよね。
じっくり取り組んでいきましょう。ただ、抱え込むのだけはやめましょう。
ご本人もご家族もです。これはお願いです。

≪性格的にあまり重くしんどく捉えたくないところがあります。
 それは客観的な見方ではないのかもしれません。
 ですが、制度も少しずつ進歩しています。
 楽観視はできませんが、悲観的になり過ぎることも
 ないかと思うのです。≫