篠山の友人が教えてくれました。「蛇紋岩米」といわれる、おいしいお米があることをご存じでしょうか。

篠山の友人が教えてくれました。
「蛇紋岩米」といわれる、おいしいお米があることをご存じでしょうか。

参考文献
農文協編『おいしいコメはどこがちがうか』社団法人農山漁村文化協会
神戸新聞出版センター編『兵庫県大百科事典(上巻)』神戸新聞出版センター

播州米、篠山産コシヒカリ、但馬のコウノトリ米などのブランドがある兵庫県もおいしい
お米の産地、つまり「米どころ」です。

そのなかに「蛇紋岩米」といわれる、おいしいお米があることをご存じでしょうか。

蛇紋岩米は、兵庫県北部の但馬地方、現在の養父(やぶ)市、旧八鹿(ようか)町の八木川流域などで生産されています。

流通量が少ないこの「幻の米」は甘みと粘り強く、つややかで光沢があり、ふっくらしていて粒も大きめで非常においしいと評価されていますが、その大きな理由は土壌と水にあるようです。

蛇紋岩とは岩の表面に蛇のような文様が観られることからその名が付いた岩石で、養父市の南但山地で、東西約20km、南北約5kmにかけてレンズ状の大きな蛇紋岩岩帯が広がっています。

ちょうど八木川の右岸に該当する場所です。

旧但東町(現・豊岡市)にも蛇紋岩の地層があります。

蛇紋岩はカンラン石や輝石がもととなっています。

カンラン石や輝石(きせき)は有色鉱物といわれ、一般的に鉄、マンガンほか微量ミネラルの含有量が多く含まれています。

肥料の三大要素、窒素、リン酸、カリウムのみの肥料で育てた米より、ミネラルを含む肥料で育てられた米の方が食味が良いという実験結果もあることから、ミネラルは米の食味を向上させる働きがあるといえます。

また、蛇紋岩は風化しやすいという性質を持つことから、長い年月をかけてミネラルを含む蛇紋岩の成分が風化、八木川流域で堆積し、それが現在米づくりの土壌をつくっているということは想像に難くありません。

特にこのあたりの土壌のマグネシウム含有量は通常の約2倍ともいわれ、カリウムの含有量も豊富。

その上粘土質で、米づくりにはまたとない条件の土壌を誇っています。

おいしいお米が育つ必須条件に、水質が挙げられます。窒素含有量が少なく、ミネラルが豊富で、冷たい(けど冷たすぎない)水、つまり山に近い清らかな水が絶好の条件となります。

その条件に当てはまる氷ノ山(ひょうのせん)山系から流れ出るわき水や雪解け水といった天然水は、山地に隣接する水田に注がれます。

蛇紋岩米の生産地では土壌のみならず、稲を育む水にもマグネシウムやミネラルを豊富に含みます。

蛇紋岩米はこのように奇跡的ともいえる条件で育てられていますが、生産地には篤農家も多く、化学肥料を使わず有機肥料で育てるなどの努力をされています。

魚沼産コシヒカリに勝るとも劣らないという高い評価を得る蛇紋岩米。

その甘みと粘りのハーモニーは、まさに自然と人との〝協奏曲〟なのです。

参考文献
農文協編『おいしいコメはどこがちがうか』社団法人農山漁村文化協会
神戸新聞出版センター編『兵庫県大百科事典(上巻)』神戸新聞出版センター

蛇紋岩米研究室(うまいもん研究室)からの引用です。

「うまいもん」とは何か。
グルメばやりというのか、いろいろと情報は溢れていますが、本当にうまいもんとは何か。

当研究室は、ちょっと違った角度からも考えてみたいと思います。

「うまいもん」とは単に味わいだけのことであってはならない。
「うまいもん」は身体を「うまい具合に」してくれる元でなければならない。

従って、安全であるとか安心であるとかは、当然にして当然、議論の必要は無い。
身体を「うまい具合に」するとはどういうことか、生理的に人体が生命体としてうまく機能し働くこと、これも当たり前で議論の必要が無い。

では本当に「うまいもん」とはさらにどんな働きや力が備わっているべきものなのか。

ほんとうに「うまいもんは」人の世から争いや貧困やあらゆる悲しみを取り除く力がそなわってなければならない。
これが当研究所の見解である。

話が飛びすぎている、その通りですが、でも確かにそうも言えませんか。「うまいもん」の争奪戦により人々は争い、競い合っているようですから話は複雑で深刻です。

奪い合っている「うまいもんが」実は本当に「うまいもん」かどうか疑わなければいけないようです。なぜなら本当に「うまいもん」を手に入れ食した人は争いを起こさないはずですから。

本当に「うまいもん」にはそんな力があるはずです。それを「うまいもん」と当研究所は呼びたいのです。そして、そんな「うまいもん」を捜していきます。さて、あるのでしょうか。

当面の研究対象

1 高柳産の米、特に「蛇紋岩米」と呼ばれている「こしひかり」について 
「うまみ」について、あれこれといわれているので、とりあえず「うまみ」 について考察を試みる。

右図1は「おいしいコメはどこがちがうか」1992(社)農文協より、北海道立上川農業試験場、稲津脩論文より

2 米のうまみは何が左右するか。

要因が複雑にからんでいて解明は大変難しいことが図1からも解る。
しかし、私たちが「うまい」と感じている多くの要素は図の赤枠、さらには青枠のテクスチャーが大部分ではないかとの指摘もある。これは十分に納得できることでもある。

様々な文献、論文、経験等を総合して、あえて結論付けると、
①米自身の持つ化学的要因が左右する食味の違い
②米の持つ特質・特性を引き出す栽培法(収穫から乾燥・精米・貯蔵法も含む)図では左側に関係する。
③産地と気象条件である。

①は品種改良によりうまい米が出現してきた。こしひかりが代表選手であろう。その特性は後で述べる。

②これにも様々な研究成果と実践がある。ここは研究者に譲る。

③は産地第一主義は間違い、と言う声もありながら根強く信じられている。「魚沼産」コシヒカリが代表的。産地ということは気象条件のほかに土壌を分析する必要があるが、産地の土壌を徹底的に比較検討した論文には未だ出会わない。

さて、当地の「蛇紋岩米」であるが、伝えられていることを整理し科学的に分析が可能であろうか。

まず、蛇紋岩質の土壌が大きく作用しているという点と蛇紋岩質の地質から出る水が作用しているという点、さらに日照条件も論じられるが、どう考えても「土壌」を第一に分析すべきであろう。

なぜなら、他地域と決定的に違うとすれば他に大きな影響を持つ要因がこれ以外に考えにくいからである。

仮説:
蛇紋岩質の土壌は米作りによい。この地が蛇紋岩質土壌であるかどうかから見ていきたい。次の図は兵庫県の地質図(兵庫県地質鉱産図より)である。黄色く塗った部分が全国的にも珍しい蛇紋岩質の岩脈であり、関宮町から八鹿町朝倉付近にかけての鉱脈である。南側には大屋町、養父町も含まれる。

大きな蛇紋岩のブロックが東西に走りこの土地の成り立ちの大きな特徴が見て取れる。この蛇紋岩が風化しこの地を流れる八木川の流れにより南北の河岸段丘的な僅かな平地が長い間に形成されたであろう。流域の北側の山脈の地質は蛇紋岩ではなく断層が走り南北の山の地質は全く二分される。

しかし蛇紋岩質の土壌としては八木川の両側の土壌岩盤は変わらず。工事等で出土したサンプルからも視認できる露出岩からも明快である。おそらく長大な時間をかけてこの川は狭い山間を蛇行し氾濫を繰り返し、流れを変えながらこの南北の山脈の間を肥えた土を削り、運び、堆積させ続けたのであろう。地図の緑色が耕作地で、青色が蛇紋岩の鉱脈である。