日 時 平成23年7月8日(金)
場 所 池田泉州銀行講堂
講 師 田口章子氏(京都造形芸術大学教授)
大阪・松竹座で行われている「七月大歌舞伎」の演目から、
夜の部の「菅原伝授手習鑑」と「伊勢音頭恋寝刃」をご紹介
いただきました。
前者は、元々人形浄瑠璃であったものを歌舞伎化したも
ので、「義太夫狂言」といいます。
筋書きは梅王丸・桜丸が松王丸(三人は三つ子)に吉田神社の境内で喧嘩をふっかけるというたわいもないもので、キーワードは隅取・紅隈・藍隈(顔に赤や青の筋を書き、強さを表す。)や化粧声(主役・松王丸が登場すると声をかける。)等とのこと。
後者は、歌舞伎狂言・世話物で歴史ものではなく、一般人を主人公にしている通しものです。
粗筋は、主人公の御師(旅行業者兼神職)が主君の家に伝わる家宝の刀が盗まれ、それを取り戻すために殺人を犯すというもので、殺人事件も歌舞伎はみごとにきれいに描いているとのことです。
このように主君のためなら自分を犠牲にするということで、江戸時代はかなり封建的だったように思われますが、実は明治新政府が徳川政権を悪者にするためにつくったイメージでもあったようです。
氏は、江戸時代は恥と情を生き方の原理とした時代で、人との繋がりを大切にしていたが、現代はその価値観を失い、誤った個人主義が横行していると締めくくられました。