『前方後円墳時代』・・・後期講座(歴史コース)

(%緑点%) 後期講座(歴史コース:全15回講義)の第4回の講義報告です。
・日時:10月4日(火)am10時〜12時
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「前方後円墳時代」
・講師: 笠井 敏光先生(文化プロデューサー)
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.弥生時代(紀元前4世紀〜3世紀頃)
① 「武器(石の剣、石の鏃)・戦い」のひろがり(紀元前1世紀から1世紀)…「 地域内でおさまっている」
② 「祭器・祭祀の分布域」 (紀元前1世紀頃)は「交錯」→(2世紀頃)は「対立的」で境界ができている
・祭祀の変遷
「墳丘墓の出現」 …弥生時代中期[紀元前2世紀〜1世紀頃])には、中国地方から関東地方にかけて墳丘墓が広がる。
・東アジアの影響あり
・モノからヒト(人)への変化…青銅器(祭祀・祭器)(モノ)→墳丘墓=首長霊(ヒト)
・弥生時代後期後半の西日本には、相当の規模の墳丘墓をもつ首長墓が出現。それらは、墳形、供献土器など明瞭な地域的な特色をもち、吉備、山陰という地域ごとに首長たちが共通の葬送祭祀を執り行った。

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2.前方後円墳時代(3世紀後半〜7世紀初)[350年間]
①弥生時代後期、盛り土をもつ首長墓「墳丘墓」が各地で築かれる。
②3世紀後半になると、西日本では、大規模な墳丘をもつ「古墳」が築造される。
・箸墓古墳(奈良県・桜井市/三輪山山麓)…最古の大型前方後円墳、全長280m
・浦間茶臼山古墳(吉備・岡山市)…前方後円墳140m
・石塚山古墳(北部九州・福岡県)…前方後円墳120m
③大型前方後円墳の構成要素と系譜
○弥生墳墓から前方後円墳へ…墳丘、葺石、埋葬施設、副葬品などの諸要素は、つながっていったが、一つの地域の弥生墳墓が前方後円墳にそのまま移行したのではない。
・前方後円墳の墳形⇒吉備、讃岐、播磨、大和などの諸地域
・墳丘を飾る葺石⇒出雲地域
・円筒埴輪につながる特殊器台・壺型土器は吉備などの地域
・竪穴式石槨⇒吉備・東瀬戸内 など
・・・・弥生墳墓の諸要素を結合したのが前方後円墳。だからこそ、成立の当初から前方後円墳は、各地をつらぬく共通性の側面をもっており、西日本首長層の連合(同盟)を表明していた。(参考文献「前方後円墳の世界」広瀬和雄著より)
○弥生墳墓には無かった外部の権威の導入⇒「中国思想」(中国王朝)
・朱・ベンガラ、鏡、北頭位など
・神仙思想

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3.東アジア世界
○日本と朝鮮半島の古墳との比較
【倭】 ・墳丘規模(最大)[480m」 ・墳形[前方後円墳、前方後方墳、円墳、方墳] ・外表施設[段築、葺石、円筒埴輪、形象埴輪、周濠] ・場所[全国]
【百済】 ・墳丘規模(最大)[30m」 ・墳形[円墳] ・外表施設[外護列石] ・場所[王都]
【新羅】 ・墳丘規模(最大)[120m」 ・墳形[円墳、双円墳] ・外表施設[外護列石] ・場所[王都]
【高句麗 】 ・墳丘規模(最大)[60m」 ・墳形[円墳] ・外表施設[外護列石] ・場所[王都]

*朝鮮半島の古墳は、墳丘の規模がそれほど大きくないが、朝鮮半島の古墳が特に小さいのではなく、日本列島(北海道、北東北、沖縄を除く)の各地で、異常に大きい古墳が造られた。
*韓国にもある前方後円墳…倭人の百済官僚の墓と考えられる(石室が九州型など)
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4.前方後円墳時代(古墳時代)
①古墳とは?
・画一的な内容を持って出現した大型の墳丘墓を「古墳(こふん)」と呼ぶ
②どこから古墳時代か?
・弥生時代終末期(2世紀〜3世紀中)…纏向遺跡の墳丘墓は、墳丘100mまで。⇒ 「箸墓古墳」は、墳丘の長さ280m。埋葬方式は、竪穴式石室、副葬品(大量の鏡と鉄製の武器や農工具といった呪術的・宗教的色彩の強いものである)
③画一的な内容をもった新しい大型の墳丘墓は、北部九州から.近畿までの西日本各地に及ぶ(より広域の政治的連合関係が成立)
・東日本は、初期の古墳がほとんど”前方後方墳”。(西日本の前方後円墳の世界に対して、東日本の前方後方墳の世界が存在した)
④古墳は”見せる墳墓”(埴輪、段築、葺石など)

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(%ノート%) 歴史コースの次回講義(案内)
・日時:10月11日(火)am10時〜12時
・演題: 「近世大坂の成立」
・講師:脇田 修先生(大阪歴史博物館館長)