(この一文は、「年をとっても元気で楽しく暮らそう」というグループの通信紙に寄稿したものです)

認知症になって頭の働きが弱ってくると、日常生活が自立的に行えなくなって困る…、という話は誰でも知ってのとおりです。認知症は、なりたくてなるのではない、是も誰もが知っています。ではどうしたらよいのか。それが予防です。
おおまかに分けて予防には、3段階があります。

一次予防
頭の健康な人は発症しないように一次予防を心がけましょう。 
ウォーキング、音読、計算、パソコンに挑戦する、日記を書く、失敗した人を追い詰めるような厳しい物言いを止める会話の工夫、…等々は心がけ次第で、だれでもが一人でできる一次予防です。「ぼけに追い込む」ような物言い(あるいは言動を)をしたり、人を咎めてばかりいると、家庭も社会も、殺伐としてきます。 

社会全般が人に優しくかかわるようになる…、これをめざしたいですね。そのためには、なるべく認知症予防勉強会にも参加して頂きたいです。

二次予防
少し頭の働きが鈍ってきたかな、心配だな、という時期は予防が一番大事な二次予防の時期です。冷水が歯にしみる、虫歯かな?背中がぞくぞくとする、風邪をひきそう? と同じような時期です。
この時期は微妙で手遅れになりやすいのですが、自分でも認知症の知識が少しでもあると自覚できますし、家族がチョットおかしいよ、と気が付くはずです。
精密検査を受けても「まだ認知症ではありません」と診断されることもあって、安心して対応しなかった…、次に受診したら認知症になってしまっていた…、という話は珍しくありません。
この時期には週1回程度の、楽しい「認知症予防教室」に行っていただきたいのです。週1回を20回通えば卒業です。

三次予防
三次予防というのは、認知症を発病して要介護に入った人でも進行・悪化をくいとめるものです。
しかも、それだけではなくて、少しでも自立的な生活ができるように引き戻しをも目指します。認知症のため会社も退職して居た方が教室に通われているうちに段々と信頼感を持ち、冗談を言えるようになり、新しい仲間と道で出会ったときには、相手の名前を呼びかけて挨拶された、と、相手の人がビックリされた実話もあります。

認知症予防スリーA方式の簡単紹介 
“スリーA方式”とは、創始者の名前を取って、“増田方式”と呼ぶこともあります。
スリーAという意味は「あかるく、頭を使って、あきらめない」というモットーの、頭文字をとった名前です。 

その「認知症予防教室」では何を行うかというと、脳を活性化する、言い換えると頭のリハビリをします。
リハビリと聞くと、なんだか痛い思いをさせられるのか、ビシバシと教練を課せられるのか、このような心配をされるでしょうか? いいえ全く反対です。

頭に効く薬は、楽しい思い、優しい言葉掛けと配慮、認められ褒められることが最高の薬なのです。予防教室では、たびたび皆が思わず声をあげて、どっと笑います。そのような場面が一杯工夫されています。簡単にいうと、“楽しいゲーム”を次々と行うのがスリーAの予防プログラムです。10人前後の教室はとても楽しく、頭がいきいきとしてきます。
その教室に週1回、20回通うことで、改善した状態が身につき、数年間保持できるようになります。個人差はありますが。中には8年、10年と保って、記憶力は完璧ではないものの明るく穏やかな生活を続けられる方もおられます。

皆がどっと声をあげて笑う“楽しいゲーム” なぜゲームに効果があるのか
①ルールの説明が簡単で短いので聞いて理解出来ます。
②関節や腕などの筋肉をルールに従って動かすので、知らないまに運動になります。
③ルールを間違えないようにしようと、自然に思うので記憶力の継続訓練になります。
④リズムの明確な歌を皆で歌いますから、発声機能が刺激されます。
⑤皆と声を揃えて歌うので、聴覚機能の刺激になります。
⑥ゲームの中で隣同士タッチして拍子を取るのでリズム感が自然に戻ってきます。
⑦「私はぼけて駄目人間だ」と悲しくなって居た人も、スタッフから褒められ、少しずつ自信がついてきます。
⑧皆が同時に失敗するゲームの工夫があるので、「私だけじゃない」と癒され、人間関係が作れるようになります。
⑨笑いが一杯溢れているので、脳がイキイキとしてきて、生活意欲が改善します。

以上のような多彩な良い刺激が、同時に感じられるように考えられているのが「スリーA方式」の特徴です。

スリーA方式の予防教室では、1〜2時間ほど脳に同時に色々な刺激を与えることで活性化に取り組んで、認知症予防と認知症からの引き戻しに高い成果をあげているのです。
(データーは http://www.n-yobo.net/ を開いてメニューから「自己紹介&スリーAとは」参照)
小学唱歌や童謡ならば高齢になっても忘れていない、楽しい思い出の歌ですから、懐かしい時代の記憶が戻り、心が弾みます。

日常生活にない、非日常の笑いの効果を駆使した予防教室が、近所にできて、気軽に誘い合って行けるように、皆さんもゲームの指導ができるようになってくださいませんか。
(高林実結樹)