9月29日、にっち倶楽部主催(県立神戸生活創造センター共催)の講座「認知症の現場から」を芦屋市民センターで開催しました。
東は大津から西は龍野市まで、74名の方が聴講に来られ、
<認知症>に対する関心の深さに、いささか驚きました。
第1回目は「高齢者医療の第一人者が語る−認知症とは?」と題して、国際高齢者問題研究所(芦屋)所長の医師岡本祐三氏が1時間半にわたって、スライドやビデオを交えて講演してくださいました。
主な要点を挙げると、
1. 有吉佐和子の『恍惚の人』の時代には、痴呆患者の「世話」は家族が行い、
受け入れてくれる施設はなかった。
よほど病気が進行し、家族の手に負えなくなった時に、
精神病院に入れるくらいが唯一のやり方だった。
2. 家族の「世話」は身体の世話が中心で、
それでもひどい「床ずれ」を防ぐことができなかった。
(20数年前、岡本先生が、寝たきり老人の訪問介護をしている時の様子を
スライドで紹介。骨が現れた「床ずれ」のあまりのひどさに気持ち悪くなった)。
3. 認知症を患ったある高校教師が描いた数枚の絵を紹介。
風景がだんだんと輪郭を失っていくさまが、
8年間の闘病生活中に描いた絵からはっきりとわかる。
最後には、光と空だけが描かれていた。
4. 最近の認知症を病む人に対する介護は、
身体介護から、こころの面を見つめた介護に向かっている。
そのこころのありさまは<不安>と<混乱>。
5. 「高齢社会をよくする会女性の会・京都」が発行したビデオ
『ぼけなんか恐くない』の一部を上映。主人公の痴呆を病む老女の過去を調べ、
デパートの和服売り場で働いていたことを知った、グループホームのスタッフは、
彼女に若いスタッフの着付けを頼む。
そのときから、「生まれ育った生家に帰りたい」とごねていた老女の言動が
ガラリと変わる。
この作品のディレクターをつとめたNHKの小宮英美さん(現解説委員)が、
この取材を元に『痴呆性高齢者ケア—グループホームで立ち直る人々』を書いている。
6. 認知症患者を家族で看ることの困難さ。
自分を育ててくれた親のかつての姿を知っているだけに、難しい。
専門家に任せられるところは任せるほうがいい。
こんなところが、講演の内容でした。
スライドやビデオを使ったわかりやすい解説で、聴講された方の反応も上々でした。
次回は、高齢者総合福祉施設オリンピア兵庫館長 山口宰氏、
3回目は、認知症患者や介護保険施設で働くヘルパーさんらが
気楽に集える場を主宰する「つどい場 さくらちゃん」(西宮)代表、
丸尾多重子さんの講演と続きます。興味のある方は、奮ってご参加ください。
なお、第1回の講演の後行ったアンケート結果は、後日、このブログに掲載いたします。