Rは、Hの家では、ソファーにドカっと足を広げて座るか、床にあぐらをかいて座ります。
その日、Hの母Yは、RとHがしゃべっている横で仕事をしていました。
ふいにRは、仕事をしているYの横に行き話しかけました。
「Hママ(RはいつもYをこう呼んでいます)はなんで何も言わないん?」
意味が分からないYは「なんのこと?」と問い返しました。
「自分(R)が足を広げて座っていても何もいわないじゃん」とR。
「いつも何かを言われるの?」と、仕事の手をおいてYはRを見つめて聞きました。
すると「どこに行っても言われる。『女の子なんだから、足は閉じなさい』って」と
Rはうつむきました。
いつも元気いっぱいのRが見せる、はじめての悲しい顔でした。
それからRは、ポツポツとこれまで秘めてきた胸のうちを話はじめました。
学校でクラスメイトから「ヘンタイ」「おとこおんな」と言われること。
先生に訴えても「あなたも悪いんじゃない?」と言われて取り合ってくれないこと。
家で祖母に「女の子だから」と、朝から寝るまで行動を監視されること。
友達の家で大人に「ヘンな子」という目で見られること。
そしてYにこう言いました。
「Hママは自分(R)を『ヘンな子』って目で見ないね。変わってる」と。
そのRの言葉に凝縮された多くの意味を感じ取り、Yは切なくてたまらなくなるのでした。
(つづく)