介護保険施設の利益率

今朝の朝日新聞の朝刊に、次のような記事が載っていた。

 「介護保険施設の平均利益率(収入に占める利益の割合)が8〜10%に達し、約2%の民間病院と比べて格段に高いことが、厚生労働省の「介護事業経営概況調査」で分かった。来年度には介護報酬改定が予定されており、同省では今回の調査結果を参考に、報酬を見直したい考えだ」。

 厚生労働省の発表を何のコメントもなく投げ出した記事だが、<利益率>のような具体像のない数字を病院のそれと比較して、「報酬を見直す」と結論付ける発想に寒気を覚えるのは私ばかりではないだろう。
 石川県のあるグループホームで、夜間1人のヘルパーが 介護に当たっていて、認知症を病む老婆をヤケドで死亡させるという事件があった。認知症患者がもっとも不安になる夜間を、1人のヘルパーが9人の入所者を見ている実態が明るみに出て、驚いてしまった。法的(厚生労働省の規則では、昼間は入所者3人に1人のスタッフ、夜間は18人まで1人で見ることができるという!)にはなんら問題はないということだったが、常識的に考えて、こんなひどい話はない。
 少なくとも2人で看るのが常識というものだろう。徹夜を経験した人にはよくわかると思うが、夜ってのには、どこか魔物が住んでいるようなところがあって、異常な神経になりやすいのだ。その上、相手は、肉親が世話できなくなって、施設に預けたボケの進んだ人たちだ。2人以上のスタッフが互いに目を配りあって世話をしなければ、認知症患者に対して、何をしても許されることになってしまう。
 ところが、グループホームの経営者は、夜間のスタッフを2人にすると600万円ほどの経費増になり、経営が成り立たなくなるため、規則ギリギリの人員で運営しているとのことだ。上記の朝日の記事では「認知症グループホーム」の利益率は9.2%。この記事では収入金額がわからないからなんともいえないが、はたして、600万円を吸収できない利益なのだろうか?
 もちろん、経営は大事だ。利益が上がる仕組みにしなければ、この世界に参入してくる経営者は増えないだろう。しかし、人件費を切り詰めて経営した結果、利益率が上がりすぎて報酬を見直されてしまっては、どこに福祉があるのかといいたくなる。経営者は、ますます、過酷な労働によって人件費を切り詰めて利益を求めるだろうし、儲からないとなると、今盛んに参入しているガス会社や電気会社といった大手異業種も参入をやめてしまうだろう。そして、結局のところ、犠牲になるのは、いつものように介護保険を利用する者なのだ。