「アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)2006」ネットワーク会議

戸倉上山田中学校の中平千尋です。
2月11日と12日、東京・浅草にあるアサヒビール・アートスクエアにて、「アサヒ・アート・フェスティバル(AAF)2006」ネットワーク会議が行われました。「とがびプロジェクト実行委員会」として今までの経過を説明、全国発信の良い機会でしたので、是非中学生にも発表させたいと考え、とがび2005で、ギャラリー・トークツアー担当として活躍した2学年の鈴木さんに発表していただきました(全文を文末に掲載)。
鈴木さんは、「とがびプロジェクト」開始当時の不安や期待感、昨年度の326(ナカムラミツル)作品をお借りし、多くの方々が感動していた様子を素直な言葉で表現してくれました。
AAF実行委員や全国のほかの企画者からは、「とても楽しみなので、是非見に行かせていただきます」「中学生がやっているところが良い」とたいへんな反響でした。私自身もやる気がみなぎってくる思いがしました。
ネットワーク会議に出席して、いろいろ感じたことはあったのですが、うまく考えがまとまらず全体に話せなかったことがあります。それは、今後、学校の義務教育から図工や美術が消えていくだろうと予想され、なくしても良いのではないかと真剣に主張する教育者もいる中で、しかし地域のアートプロジェクトは、是非とも小学生や中学生を巻き込んでいってほしいということです。さらに言うと、学校の先生方を積極的に巻き込んでいってほしいと思います。
11日に、AAF参加の全国で行われる他の企画者からのプレゼンをお聞きしましたが、全23企画の中で、学校関係者が登場するものはほとんどありませんでした。全国でこのような取り組みがもう5年の長きにわたって行われてきているのに、学校関係者がなぜ関わってこないのか。そこに大きな問題がかくされていると感じました。もし学校教育の中で美術を行う時代が終わってしまったとしたら、あとは地域でやっていくしかないわけです。そういう日は遠からず訪れる気がしてなりません。危機感を常にもっていくべきではないかとの思いを痛烈に感じました。

AAFネットワーク会議プレゼンテーション原稿
発表者:鈴木 (千曲市立戸倉上山田中学校2学年) 
発表日:平成18年2月11日土曜日
発表場所:アサヒ・アート・スクエア(東京・浅草)

戸倉上山田中学校の鈴木です。
最初の「戸倉上山田びじゅつ中学校」、略して「とがび」は平成16年(2004年)10月9日・10日に行われました。この活動は、1年1組・2組の生徒が、「キッズ学芸員」として企画・運営を行い、まさに学校を美術館に一変させたプロジェクトでした。
まずは中平先生からお話を聞き、長野県信濃美術館が所蔵する東山魁夷の絵を借りたい! ということになり、さっそく美術館へ行って、「東山魁夷さんの絵を貸してください」と頼みました。けれども、単刀直入にそんなことを言っても貸していただけるわけがありません。なので、美術館の松本猛館長さんや学芸員さんに絵をどのように配置すればよいのか、光の調節・湿度はどうしたらよいかなど大切な事を教えてもらいました。そして、教室をどのようにすれば、絵に良い環境が作れるのか、学芸員さん、先生、「キッズ学芸員・東山グループ」を中心に考え、貸し出し条件がそろって、東山魁夷さんの絵を借りることができました。そこまで本当にすごく苦労しました。
このプロジェクトには、他にも池田満寿夫さんの版画や、県内外から来てくださった作家さんもいました。当日は台風だったのですが、大勢のお客さんが来てくれました。春から準備が行われて、アンケートやちらし配り、ポスター作りなど大変でしたが、すごくいい思い出になり大成功に終わりました。
平成17年(2005年)10月8日・9日。第2回目の「とがびプロジェクト」が行われました。2学年の総合の時間を使って(※第1回の「とがび」で「キッズ学芸員」をした生徒はこの年、2学年になっていました)、56名の生徒が協力して活動に取り組みました。この年は、生徒が自分たちで呼びたい作家さんに手紙やビデオ・レターなどを送って参加を頼みました。
私は、イラストレーターの326(ナカムラミツル)さんのイラストをとがびプロジェクトで展示したいと思い、友達と一緒に手紙とビデオ・レターを送りました。そうしたら、なんと返事が返ってきて、イラストを借りる事ができました。当日、326さんのイラストを見に来てくれたお客さんがたくさんいて、イラストや詩を見て、「すごく感動した」「来て良かった」という感想を私たち「キッズ学芸員」に言ってくれました。他に参加してくださったのは、昨年に引き続き東山魁夷さん(※長野県信濃美術館より借り受け)や、奈良美智さん(※松本市のコレクター所蔵品を借り受け)など、たくさんの作家さんに協力していただきました。
「キッズ学芸員」の活動では、「ギャラリー・トーク・ツアー」を行いました。「ギャラリー・トーク・ツアー」とは、お客さんを全ての展示場所に作品の説明をしながらご案内するという活動です。このツアーをやってみて、準備では、展示する作品の資料を集めたり、どのように説明すれば良いか、すごく大変でしたが、長野県信濃美術館の学芸員さんにギャラリー・トークについて大切なことや、わからないことをお聞きし、何回も練習しました。当日は、自分なりに作品の説明をしたり、地域の方々とお話をしたりして、「とがび」についての感想などを伺うことができました。お客さんの感想の中には、「全ての展示場所が見学でき、説明も聞けて良かった」「中学生がこんな大きな活動をやっていてすごい。がんばってね」などあり、本当に嬉しかったです。
学校が美術館になったあの日を、もう一度実現させたいと私は思っています。戸倉上山田中学校で行われた「とがびプロジェクト」は、説明しても説明したりないくらいの思い出や良いところがたくさんあります。今年平成18年(2006年)10月に予定されている第三回目の「とがびプロジェクト」では、もっとたくさんの人に知ってもらい、見に来ていただきたいと思っています。
私は、一つの教室を使って、今までの「とがび」の思い出や良いところをぎっしり詰め込んだ空間を作ることができたらいいなあと思っています。今から、次のとがびの計画を立てていきたいです。大きな感動、そして…戸倉上山田中学校をアートでジャックしたいです。