通い湯治10か月その18「勘七湯・高橋さん」

「なぜこれを栓抜きと言うのでしょうね」と瓶ビールのふたを栓抜きであけながら勘七湯の高橋さん。「だってこれはふたですよね。しかもふたをはずすんですから、抜くのではなく、はがすわけで、するとこれは正確には”ふたはがし”といわざるをえないわけです」
なるほど、とか言いながらまた新しい瓶をあけてビールをごくりごくり。
本当に、私たちは言葉の海に漂うもの、ことのはの田畑に生い茂るものたちのようです。なんでもないと思っていたものに価値を植付け、無数の言葉を体よく刈り取り、枯れた言葉への愛着を隠さない。
いつか「アートと湯治」「アートin湯治」というこの言葉にも無数の枝葉がのびてゆき、豊かな実りを結ぶことを願って。
写真は「ふたはがし」のお話をうかがった翌日の勘七湯別館。これまで見ていたのとはちょっと表情がちがって見えてきました。

(コメント:門脇篤