■市民労働の可能性 

〜社会の構造変化に対する一つの方策として、あるいは
 社会のありかたを変える可能性を有する考え方として〜

 初めの回で説明した市民労働が、職業社会の終焉、あるいは
社会の構造変化に対して、どのように対応することが出来るの
でしょうか。

それは、失業者対策にとって有効な手立てとなる、ということです。
従来、国家による失業者対策は,経済成長を推進することで間接的に
なされていましたが、経済のグローバル化した今日においては、
国家の力が労働市場に持ちうる影響力は、ますます制限されます。
ところが、国家は市民労働への助成を通じて、直接的・効果的に
失業を緩和することが可能になる、と考えられるということです。

さらに、「付加的コストを発生させずに福祉をおこなうことも、
失業保険金や生活保護金を市民労働の収入源に移転することで
可能となる」と述べています。
 
また、Beckは、職業労働ばかりが重んじられてきた従来の
「労働」概念に変化を引き起こすきっかけとなり得るものとして
「市民労働」という概念を捉えていますし、さらに「市民労働」の
考え方は、旧来の国民国家の枠組みに相対的に拘束されないため、
国民国家の枠組みの中では対処しきれなかった様々な現代的諸問題
(社会や文化,エコロジー等に関する)に取り組む可能性をも、
市民労働は有している、と述べています。

(つづく)