ワールドカップの愉しみ方

辻信一です。夏至のキャンドルナイト週間を皆さんはどう過ごしましたか。

ワールドカップの大騒動の中でのキャンドルナイトというのもなかなか複雑なものです。自分の国のチームを応援するこの熱い気持ちを、ぜひこの国のよりよい未来をつくりだす活力にできたらなあ、と思うのはぼくだけじゃないでしょう。ロッカショ、止めようよ。それがほんとの愛国だよね、と坂本龍一さんとも頷きあったものです。

国、国、国のワールドカップですが、ベスト16に進出を決めたエクアドルチームについてちょっと。ぼくはエクアドルという国に10数回(正確な回数を忘れるほど)「通って」、まあ、環境活動のお手伝いをやってたんですが、そこでの出会いからナマケモノ倶楽部も生まれた。つまり、エクアドルってぼくの環境活動の原点でもあり、ナマクラの故郷でもあるんですね。

さて最初の2、3年は何度いっても、ぼくが訪ねるのは国の北東の隅っこにあるエスメラルダス(エメラルドの意)という県だけ。しかもその沿岸地帯の村々だけだった。そこはマングローブの世界最高木(63メートル)を含むマングローブ原生林が残っている場所で、住民は黒人。ここでこの世界一のマングローブ生態系をなんとか守りたい、そしてそれをよりどころに生きてきた人々の持続可能な暮らしづくりを応援したい、とぼくたちは活動していたわけです。

サッカーでしかエクアドルを知らないという人は、多分エクアドルは黒人の国だと思うんじゃないか。でも、実は、黒人は人口の3%にも満たないと言われている。というのは黒人が集中的に住んでいるエスメラルダス県は、エクアドルの中の僻地で、首都に住んでいるような人たちは、エスメラルダスがどこにあるのかもよくわからない、というほどの「秘境」なんです。

要するに皆さんがテレビで見るあのエクアドルチームというのは実はエスメラルダス県人チームで、日本で言えば、島根県とか、徳島県チームみたいなものなんだ、ということ。いや、黒人たちが差別されたり、無視されたりする程度は日本の一県と到底比較できるものではありません。

この前の試合で出てきた選手に「Ayovi」っていうのがいて感激。だってこれはあの「星のおじーさま」こと、パパ・ロンコン(写真右)の本名なんです。珍しい名前で、たぶんアフリカ起源だと思う。あの選手はもしかしたら、パパの甥っ子かなんか、かも。