ドキュメント/アートin湯治(AIT)「緑陰の妖精」

GOTEN GOTEN 2006 アート湯治祭」7月の企画「アートin湯治(AIT)」終了からすでにひと月あまりがたってしまい、もう8月の企画「光の盆」に突入ですが、やっと時間がとれるようになってきたので、ドキュメントの方、続行してまいります。
仙台在住の現代美術作家であり、自らギャラリーも運営する越後しのさんは、旅館大沼の離れ大沼山荘「母里(もり)の湯」のある大沼公園にふたつの作品を設置しました。

越後さんは「栽培」をテーマに、増殖していく植物や昆虫などを平面作品として線で描いていましたが、2年ほど前、それが突如立体作品として立ち現れました。おそらくはじめから立体として接した方にはわからない驚きが、その変化を目の当たりにした時にあって、私はそれを今でも強烈におぼえています。
今回の作品はそうした立体化の延長にあって、しかも平面をも取り入れた、昨年来模索している作品のひとつの成果で、特に緑の中での展示ということで、これまで黒を主調にしてきた越後さんが白に取り組んだはじめての試みでもあります。

予定では木立の間にぽっかりと空いた空間に、紡錘状に作品を吊り上げるということでしたが、実際に現地で展示作業を行った結果、かなり大がかりな作業(クレーン車を入れるなど)が必要ということがわかり、やむなく木立に作品をわたすというかたちになりました。
本人は「不完全燃焼」とのことでしたが、梅雨時のしみるような緑の中、確かに自然相手にはボリューム的には不足の感もありましたが、独自の世界をつくりあげることに成功していたと思います。

そしてもう一点。こちらは「ゆきを」と題された作品で、七面鳥の毛からなる本体部分と、これをつるしているそれこそ無数に結ばれたテグスからなる部分とからなっています。
華道家・中川幸夫氏にインスパイアされて生まれた作品ということで、第2作目。もっと小さな第1作は昨年のせんだいメディアテークでの「アート・アニュアル」展で数々の賞を獲得しています。
鑑賞者にもたいへん好評で、「さわりたい」との希望に快くこたえ、女性鑑賞者の強力な支持を得ていました。

女性と言えば、越後さんは今回の湯治アーティストの中で唯一の女性。東鳴子について、「若い女性が全然いない」という感想をもらしていました。
私が感じるところでは、そもそもアート自体、女性ファンが多く、文化を支えているのは女性、という意見もよく耳にする中で、女性が活躍できる環境をつくっていくというのは今後の大きな課題ではないかと思いました。
写真は毛糸の撤去を手伝う越後さん。どうもありがとうございました。

(コメント:門脇篤