本音のコラム 戸籍制度

精神科医 斎藤学

われわれの作る社会は異端を排除する傾向が強い。
この『なれあい調和』の最も身近な例は家族である
おおかたの人々は誤解しているようだが
わが国の民法に規定されている家族の基本構造は
明治31(1898)年の改正民法以来変わっていない
そこには戸主とその妻子を戸籍というものに
一覧記述することが定められている
敗戦後の1947年、戸主を筆頭者と呼び変え
婚姻ごとに新戸籍を作るという改正があった
しかし戸籍制度という基本は踏襲されたままである

これがある限り『婚外子』なるものが発生する。
それを嫌うから人工妊娠中絶や『できちゃった婚』が多発する
戸籍制度は女性たちに婚姻→出産という生涯設計を
強要するところに問題がある
出産→結婚という流れは異端として忌避される
戸籍制度を取る社会は世界の中ではまれだが
そうした国・地域は韓国にしろ台湾にしろ出生率が著しく低い
結婚が女性にとっての危険な賭けになっているからだ

それでも勇気を奮い起こして結婚してみれば
世間との調和に悩まされることになる
まず母となることを期待され
産んだ子が世間並みであることを期待される
こうした世の期待に応えようとする親たちは
その子どもに圧力をかけざるを得ない
そして子どもたちは親の期待という重荷を背負う
最近の『親殺し事件』の報道を聞いて思うのは
そのことである

<ミョウガの花が咲いています>