とがび解剖〜キッズ学芸員のコミュニケーション能力の原点は?

中平です。とがびがテレビ東京「知恵の和」で放映され、見る機会がありました。この中で、キッズ学芸員が自分たちの作品についてお客さんに説明している姿を見ることが出来ました。
映像の中で、長野市から来られたお客さんと文部科学省・奥村先生が語り合っている姿がありました。お客さんは「生徒が生き生きと自分の作品について説明している姿に一番驚きました。授業や日常からきっとそういうことができているんでしょう」と語っていらっしゃいました。また、「こういう展示は常日頃から学習して積み重ねがないとできないですね」とも言われていました。
私は、この映像を見て、戸上中の美術科が取り組んできたことが確実に成果となって現れているし、一般のかたがたにも届いているんだなあとうれしくなりました。美術科として、生徒に「美術の楽しさ」を伝えたいけれど、それは、こういった展示活動などで不特定多数の方々に生徒自身が肯定され、ほめられることが「美術を好きになる」要因になると考えて「とがび」を実践してきたからです。そしてアートと関わる活動の中で、生徒が生き生きと取り組めるよう1年生のときから必修授業の中でも大切なことを積み上げてきているのです。

1年生の時から積み重ねて取り組んでいること。それは、「Nスパイラル」と私が勝手に呼んでいる「3年間の授業題材カリキュラム」です。
このカリキュラムは、文部科学省が作っている学習指導要領のねらいや活動内容に沿って独自にきめ出し、6年前から実践しています。
簡単に説明しますと、一つの大題材の中に、3時間程度で作品が完成する小題材が2から3つあり、その題材は、「遊び的内容の題材」から始まり、「技能的内容を身につけるスキル題材」を経て、最後に「テーマから自分が自由に発想する題材」で終わりになります。大題材のはじめには必ず有名作品などの作品鑑賞が行われ、週末には生徒作品を相互に見合って感想を書いていく「相互鑑賞」で終わります。3年間、どの題材も全てこのパターンを繰り返します。形は繰り返されますが、鑑賞題材はルネサンスから始まり、現代美術で終わるという美術史に沿ってまんべんなくすすんでいきます。
ここで私が大事にしていることは、鑑賞の中にも、有名作品や友達の作品を見ることなど様々な形があり、「見ることと、見られること」を両方行っているということです。写真は、1年生の「ルネサンス2006〜僕の私のルネサンス的出来事」という題材の「感動した瞬間」という作品です。ルネサンスの作品を鑑賞したり、最後の晩餐のなりきり写真などを撮ったりした生徒が、最後に「自分の一生を振り返って、自分に一番影響を与えたルネサンス的出来事」を絵画で表現します。
この活動で生徒は、まず自分の作品がどんな場面なのかを仲間に説明するための説
明文を書きます。それを仲間は読み、相互鑑賞の時に感想を書いていきます。「見られることと、見ること」を一年生の時から学習していくのです。

鑑賞は、名がの鑑賞も当然大切ですが、お隣の席に座っている人同士が、気軽に作品について語り合う、またはつぶやき会うということを大事にしていきたいものです。そんな積み重ねや、雰囲気がとがびでは、当たり前のこととして現れてきたんだと信じたいです。