交通事故によって脳外傷を受傷した場合の後遺障害認定については、高次脳機能障害に該当する可能性のある場合には「害専門部会」において審議が行われ、障害等級が決められていました。
また、平成13年に自賠責法が改正されてから5年が経ったことから、国(国土交通省)は、18年6月に「今後の自動車損害賠償保障制度のあり方に係る懇談会」報告書を発表し、被害者救済対策と事故防止対策を進めることとし、その報告書の中に、損害保険料算出機構(略称=損保料率機構)内に検討委員会を設置し、現行の高次脳機能障害認定システムに係る問題の有無について検討するよう指示していました。
(懇話会報告書=http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090630_2_.html)
(資料編には、交通事故の情勢発生、自賠責保険での高次脳機能障害の取り扱い経過、障害者福祉制度概要などが解りやすい表現で書かれています)
これを受けて損保料率機構では、神奈川県リハビリテーション病の院大橋正洋局長を座長する検討委員会を設置し、奈良の山口クリニック院長山口研一郎Dr、岐阜大学の阿部順子教授、脳外傷サポートセンター代表の馬屋原誠司氏、東京慈恵医科大学の橋本圭司助手の意見陳述を聴きながら検討し、19年2月2日に検討結果をとりまとめました。
<検討結果の概要>
1 高次脳機能障害の、より的確な等級認定を行うことができるよう、調査様式を改訂する。
2 子供が被害者になった場合、家族・教師等から的確に情報するための調査様式を新たに作成する。
3 被害者、医師、医療関係者等に対して、リーフレットの配布、学会での説明等、啓発活動が必要である。
4 MRI、CT等の画像で脳外傷の存在が確認できないケースでも高次脳機能障害と認定してよい者がいるとの論議については、現時点では採用できないが、医学の進歩の動向に十分な注意を払いつつ、将来に向け定期的な検討を継続すべきである。
(検討結果=報告書の内容は下記PDFを見てください)
損保料率機構では、今回の報告書に沿った体制整備を充実実施し、19年4月から新しい認定システムを運用するとしています。
日本脳外傷友の会、全国遷延性意識障害者・家族会、高次脳機能障害者と家族の会、東京高次脳機能障害協議会などの団体が、粘り強い行動を継続してきた成果が少しづつ実ってきているのではないでしょうか。